耳コピについてのトピックス集
- 2024年5月5日
- 読了時間: 11分
更新日:2024年8月20日
今回の記事は耳コピについての小話を紹介します。その中にも、役に立ちそうな情報を織り込んでありますので、是非楽しみながらお読み頂ければと思います。
・耳コピに使用する道具の変遷
耳コピをするための道具とその手法について考えてみます。先に結論を言ってしまうと、私の知っているこの20年ほどの間でも本当に世の中は便利になり、耳コピもやりやすくなりました。
それより以前の耳コピは直接経験したわけではないですが、その頃に比べたら、耳コピのハードルも大きく下がっていることは間違いないと思います。
私が経験したことのない時代の耳コピとなると、例えばLPを挙げましょう。これはまずカセットテープにダビングしなければいけません。アナログは速度によってピッチが変わりますから、ゆっくり再生したいなら、ちょうどオクターブ下がるように、速度は半分が妥当な選択となります。
速いフレーズなどで、もう少しゆっくり再生したい場合は、ピッチが変わってしまいます。また繰り返す時は、テープは巻き戻ししますが、だんだん伸びてきますし、聞きたい箇所をピンポイントで頭出しするのは難しいです。正直、今、この方法でコピーしろと言われたら、今よりも何倍も効率が悪くなることは間違いないと思います。
そこから一気に時代は下り、私の大学生くらいの時期になると、ちょうど携帯音楽プレーヤーが、MDからダウンロードやMP3等の音声ファイルに移行している時期でした。それでもまだまだ現在に比べれば、CDははるかに市民権を持っており、大学の部室に耳コピ用CDプレーヤーが登場したときはとても感動したのを覚えています。
これはCDを再生すると、自在に再生速度を変更できるもので、速いテンポの曲もゆっくりじっくり聞けたのを覚えています。その一方、一部のパソコンに詳しい学生は、その様子を見ながら「パソコンでできる」と言っていたのを覚えています。
上述した通り、ちょうど音楽をデータで持ち歩くようになってきた時代でもあったため、そういったデータを上手く取り込んで、現在の耳コピアプリなどに通じるソフトで処理していたのでしょう。いずれにせよ、それでも現在の耳コピ環境に比べればまだまだ細かい点で至らない部分は散見されます。
そして、現在ですが、改めてここで説明するまでもないでしょう。動画配信サイトでは無限に近い音楽が配信され、速度設定で速度が変更できます。ギリギリ生き残っているCD音源をパソコンに取り込んだり、ダウンロードした音声データを様々なソフトで処理し、ピッチ、テンポ、イコライザ、音の視覚化、なんでもありです。
耳コピの際に電子ピアノを使ってる場合は、電子ピアノ用と、音源を聞く用の二つのイヤホンおよびヘッドホンがあると良いと思います。どっちがどっちでも良いのですが、イヤホンの上にヘッドホンを被せることで、いちいち付け替えせずに両方聴くことができます。
その方法の場合、上から被せているヘッドホンの音が若干聞こえにくくなるのと、押さえつけているイヤホンがグリグリして耳の穴が痛くなる場合がある。というデメリットがありますので、改善策としては、オーディオインターフェースを使うことで、一つのヘッドホンやイヤホンから、音源もピアノの音も出すことも可能になります。
最後に、パソコンに取り込んでデータ化するとあっさり書きましたが、かつてLPからテープにダビングしていた作業に比べれば、手間は大きく軽減されています。昨今のあらゆる技術の進歩は目覚ましく、かつてのLP時代に現代の耳コピが想像もできなかったのと同様、さらに将来、どういった耳コピをしているのか想像もつきません。
・譜面に記載するのかどうか問題
コピーした音楽を譜面に書き落とすのかどうかですが、プロのミュージシャンでも意見が分かれます。個人的には本当に目的に依ると言えると考えています。自分もこれまで色々なコピーの仕方を試しましたが、色々メリットデメリットがあります。
例えば、記譜の最大のデメリットは時間がかかる割に、「記譜自体が目的化」していると、散々コピーしている割にフレーズを弾けるようにならない。ということです。これは注意が必要です。
一方で、メリットとしては、そのフレーズを練習して弾けるようにするかは別として、明らかに個人の記憶力を上回るフレーズを記録できることです。上記のデメリットを補おうと、書き留めないで長いフレーズの音をただ聞き取っているだけと、それはそれで、「音を聞き取ること自体が目的化」した行為となってしまいます。それを避け、かつ記譜をしないでも覚えられるかと考えた場合、やはり記憶には限界があるのです。
また、記譜できるということは、リズム含め記譜できる程に正確に聞き取れているということです。よって同じ人のさまざまな音源を、とにかく下手な鉄砲でたくさん採譜していると、たまたま似たようなフレーズや無性に気に入ったフレーズに出会って、それがきっかけでフレーズを覚えるということもあります。
それとは逆に、比較的短いお目当てのフレーズを、的を絞って練習し、確実に習得するというアプローチもあります。このアプローチで習得したフレーズを備忘録的に記譜する場合は、記譜が目的化するというデメリットを克服していると言えます。一方で、上述したような「偶然の再会や出会い」の確率は大きく下がります。また、上述の一見非効率な下手な鉄砲&とにかく採譜戦法の最大の効果である、そのピアニストのノリやクセを網羅的に感じる効果は間違いなく弱まってしまいます。
以上の様に一概に採譜自体の是非を問うことはかなり難しいです。コピーする曲(新曲なのか、慣れた曲なのか)、ピアニストのフレーズのコピーしやすさ、コピー開始時にその音源を既にどれだけ聞き込んでいるか、などでも丁度良い落としどころは変わってくるはずです。
いずれにせよ個人の能力によってそのキャパは違うと言え、短期間に大量のフレーズをコピーし、それを記譜して記録に残し、それを余すところなく習得することは記憶の仕組み上、困難です。個人的には、大まかな方針として、一人ピアニストを決め、的絞り方法で確実にフレーズを増やすなかで、ピアニストのノリやクセを理解していくメリットを享受する、美味しい所取り作戦が有効だと思っています。
・コピー譜について
コピー譜の是非ですが、個人的には、音源が手元にあるものは、コピー譜は必ずしも否定的ではありません。ただし全てにおける前提としては、コピー譜を信じ込まずに、音源と見比べて間違い探しするくらいの気概を持ったうえで使うということです。
ピアニストがコピーをする上でやはり一つのハードルが、和音でしょう。単音やメロディと、ジャズで使われるようなややこしい和音の聴き取りでは難易度が全く違うからです。なぜなら、音の組み合わせの可能性や選択肢の数が跳ね上がるからです。響きまでは聞き取れても、どうしても細かい音が聞こえなくて、それがどんな音なのか知りたい場合は、コピー譜面を活用するのは一つの解決策だと思います。
それと、特にソロピアノのコピーにおいてよくありますが、ピアニストがスパンの大きな和音を抑えている場合、自分の手では届かないために同じように弾いて響きが正しいのか確認が難しいこともあります。そういった場合も自分では弾けないことを確認するのにコピー譜が役に立ちます。
和音でなくても、好きなアドリブがどうしても聞き取れない場合は、コピー譜を参考にアドリブをコピーするのも選択肢としてはありです。それが、自力コピーへの第一歩につながるならやるべきだと思います。最終的に、コピー譜面を見ても自分で音源を聴かないと不安な気持ちになるくらいまで到達できるのが理想です。
・耳コピとオリジナリティ
耳コピに対するよくある反論に「オリジナリティがなくなるのではないか。」というものがありますので、そこに対する私の考えを述べておきます。
結論、まずは「誰かの真似すらできない人がオリジナリティなんか発揮できるわけない」です。それと、ジャズに関していえば、セッションとかライブで「あの人○○そっくりだ。」みたいな反応をもらえるレベルまで上手ければ大したレベルです。なぜなら、そのオリジナルのピアニストを感じさせるほど上手いピアノが弾けているということだからです。
以前、某音楽番組で山中千尋さんがエバンスとモンクの真似していましたが、文字通り完コピしていました。また往年のジャズジャイアントが先輩のコピーをしたり、影響を受けていたことは歴史が物語っています。具体例を挙げるとキリがないので省略しますが、みんなその上で、個性を発揮しているのです。
物事には「守破離」がありますし、日本の芸事の世界で「形破り」と「形無し」は違うと言われているようです。それと同じことです。誰か一人でも良いから、ジャズジャイアントをそっくりそのまま真似するレベルにすら到達していないのに、個性を発揮しようとするのは、「形無し」そのものです。もちろんこういったタイプの形がなくてもよい音楽はあるでしょうし、そういうものを否定するつもりはありませんので誤解なきようにお願いいたします。少なくともジャズはそうではないはずだ。と言っているだけです。
その理由は、楽譜では表現できない情報が、ジャズのノリを出せるかどうかを左右しているからです。その辺りは、是非こちらの記事も併せてお読みください。
・ベースラインのコピー方法
ベースをコピーすることにより、曲のコード進行をスムーズに推測しやすくなります。とはいえ、ベースは他の楽器に埋もれて低音で聞き取りにくく、なかなかコピーが難しいと思います。
そこで、比較的簡単にベースを聞こえるようにする方法をお伝えします。以下の方法で、ベースが単音で割とくっきり聞こえるようになります。
お手元にお好きな耳コピ補助アプリケーションをご用意下さい。インターネットで検索すれば、色々出てくると思います。今回の方法を実施するにはイコライザー機能が必要ですので、そこだけはチェックをお願いします。
手順は簡単です。
◆低音域(~250Hz)を強調し、それより高音域を全部抑える
◆再生ピッチを1オクターブ上げる
以上です。
これにより、かなりベース音が聞こえるようになります。聞こえ方によって、低音域のレベルは調整してみてください。
ジャズでは、スタ本によってある程度のコード進行は把握できますが、音源によってはリハモナイズやアレンジをしてることもよくあります。そういった場合にこの方法でコード進行を推定するのが有効です。
また、最初は難しいかもしれませんが、循環進行(Oleoなど)やブルース、枯葉などの曲から、徐々にベースラインだけを聴いてコード進行を感じる習慣をつけておくと良いでしょう。
ついでに、少し若干脱線します。いわゆるJポップなどの曲は、私はそれほど詳しくありませんが、以下のような名前が付いている進行を知識として知っておいて、ベースラインからどの進行を使った曲なのかを推測してみましょう。曲のコピーがしやすくなります。コードが分からなくても、ベースの音程を相対音感の度数で確認すれば、どのコード進行に該当するか、大まかに推測できるはずです。
ただ、最近の曲は複雑な進行も増えてきているので一筋縄でいかないことも多いですが、ネットコード検索サイトなども併用して、是非楽しみながら耳コピを進めてみてください。
以下の進行についても、詳細は、検索すればたくさん出てきます。
<王道進行>
│ⅣM7│Ⅴ7│Ⅲm7│Ⅵm7│
※補足ですが、この進行はⅣメジャーセブンスを、Ⅱm9とすれば、ジャズの逆循環と同じです。例)CメジャーならFM7をDm9(9thのミ)
私は、ジャズの逆循環のⅡm7のルートをⅣにすると、一気にポップス感が出るという感覚を持っています。
<丸サ進行>(Juts the two of us進行)
│ⅣM7│Ⅲ7│Ⅵm7│Ⅴm7/Ⅰ7│
Ⅴm7/Ⅰ7はⅣM7へのツーファイブと考えた方が分かりやすいですね。
<カノン進行>
│Ⅰ│Ⅴ│Ⅵm│Ⅲm│Ⅳ│Ⅰ│Ⅳ│Ⅴ│
世の中の、名曲、良い曲、大半はこの進行です。
<小室哲哉進行>
│Ⅵm│Ⅳ│Ⅴ│Ⅰ│
・シンプルな曲のコード進行について
ちょっとした時に弾けると何かと便利なハッピーバースデーのメロディですが、シンプルな伴奏を付ける場合のコツをお伝えします。
和音はそれぞれトニック:Ⅰ、サブドミナント:Ⅳ、ドミナント:Ⅴといった機能を持ちますが、シンプルな曲の場合、その三つで十分に伴奏をつけることができます。例えばCメジャーであれば、C△(ドミソ)、F△(ファラド)、G△(ソシレ)となります。
ⅠとⅣは行ったり来たり、Ⅴへ行くことができますが、原則ⅤはⅠに行くしかないので気を付けましょう。
これを知っておくと、楽譜に頼らなくてもシンプルな長調のメロディの最低限の伴奏付けをできるようになりますので、覚えておくと便利です。

今回の記事があなたのピアノライフの役に立てば幸いです。
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