top of page
検索

ジャズのリズム練習に最適な曲とは

  • 2024年7月6日
  • 読了時間: 9分

 

  こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。


 クラシック経験者がジャズを始める時に、難しく感じやすいポイントとして挙げられるのが「アドリブ」「ボイシング」「リズム、ノリ」です。ただ、はじめの2つがそれなりに楽譜に表せる一方、リズムやノリというのは、表現が難しく、実際の音源や演奏を聴かないと、なかなか理解できません。


 また、私自身の経験ですが、週に数回のサークル活動やアンサンブルの機会、練習中のリズム練習などをコンスタント行っていましたが、何となくスイングのリズムを感じられるようになるまで、1年以上はかかりました。(もちろん、未だにどうしたらより心地よいスイングを奏でられるか、模索を続けています。)


 そして、いくら理論やフレーズ、ボイシングでジャズみたいな音使いをしていても、リズムがハマっていないと完全にダサダサな演奏になるのが本当に残念なのですが、とにかくその位ジャズのリズムの習得は難しいのです。


 今回の記事では、その難しいジャズのリズムを(退屈なメトロ消しなどではなく)、少しでも楽しくできないか。ということで、いくつかのスタンダードナンバーを、練習方法のポイントと併せて紹介したいと思います。


 少し短いですが、この記事を読むことで、曲の演奏を通してジャズのリズムに少しでも親しめるような練習方法に気付くきっかけになれば幸いです。


 最終的には、いずれも音源と合わせられるようにすると良いでしょう。その前段階としては、まずは音源を聞きながら、頭のなかでリズムが一致させることができるかイメージするのも良いと思います。


それではお勧めの曲を紹介します。

①    C Jam Blues

②    Moanin と Stompin' at the Savoy

③    Stolen Moments


Cジャムブルース


モーニン


サヴォイでストンプ


ストールンモーメンツ



 著作権の関係上、メロディは載せられませんので、お手数おかけしますが、細かい部分のリードシートは各自で検索したり、スタ本等でご確認ください。


 

① C Jam Bluesから説明します。


 この曲のテーマのメロディは、キーの1度と5度(Cメジャーなら、ソとド)だけでできており、4小節のフレーズを3回繰り返します。単純この上ないですが、弾き始めた瞬間にこの曲と分かる一方、少しでもメロディをフェイクしようものなら、あっという間にこの曲でなくなるという、恐ろしい名曲だと思います。


楽譜

 ↑Cジャムブルースのリズム譜面。これを3回繰り返して1コーラス。


 上に4つ挙げた中でも、どれか一つだけに絞るなら、Cジャムになるだろうというほど、初心者のリズム練習に向いた曲ではないかと考えています。


その理由は、

・4小節一塊であるため、ジャズに必要な4小節感覚を感じられる。

・休符が多いため、しっかりテンポキープできないと、メロディを鳴らすタイミングがずれる

・八分音符や裏入りが適度に含まれる。

・メロディ自体はシンプルで、演奏にあたって技術的な心配が不要


一つずつ説明します。


 

<4小節一塊であるため、ジャズに必要な4小節感覚を感じられる>

 コードはブルース進行なので、ハーモニーは変化していますが、メロディとしては、4小節の繰り返しです。この4小節を一塊に捉えて練習すれば、自然とジャズの4小節感が身に付きやすいと思います。


 

<休符が多いため、しっかりテンポキープできないと、メロディを鳴らすタイミングがずれる>

(何小節目かについては、同じことを3回繰り返すため、コーラスの1、5、9小節目を「1小節目」として表記。)

 1小節目の3拍の休みから、2小節目の頭に入るまで、しっかり自分のなかでテンポをキープする必要があります。


 次に、2小節目では2、4拍に休符が入るため、自然とジャズで大切な2、4拍を感じることになります。2、4拍は、一般的にドラムのハットが鳴る所です。


 3小節目の2拍裏からの6拍の休みの間、しっかりテンポを感じる必要があります。



 

<八分音符や裏入りが適度に含まれる>

 この単純な八分音符を注意深く聞くことで、いわゆるイーブン(2つの音が均等)でもなく、3連符の2対1でもない、絶妙なスイング感に意識を向けることができます。

 

 これがフレーズになってしまうと、フレーズを弾くことに意識を奪われがちですが、単純な2音なので、八分音符のフィーリングに集中できます。


 もう一つ、3小節目の2拍裏は、多くの人が突っ込みすぎたり、遅れたり、裏を適切に感じることができません。なぜなら、1、2小節目の八分音符と異なり、3小節目の3拍目の頭にくる八分音符の先取りをして、裏入りするリズムだからです。


 こういった、拍を「食う」感覚は、何度も練習して、自然に感じられるようになる必要があります。上の休符が多いところで拍を正確に感じるのと通じるものがありますが、このような裏入りを正確に感じられないと、6拍の休符を感じる時に、ずれてしまう可能性がありますので、注意が必要です。


 余談ですが、ピーターソンは3小節目の付点四分音符も八分音符二つで弾いた後、2拍裏に音を弾いています。人によって、そういった若干の差がある場合もありますので、ご注意下さい。まずは、入門編として有名な、ガーランドのテーマを聴くと良いでしょう。


 

<メロディ自体はシンプルで、演奏にあたって技術的な心配が不要>

 リズムの練習の時は、運指やフレージング、ボイシングなど、他の要素に注意を割かれてはいけません。リズムに集中できるように、発音自体はシンプルな動作にするべきです。


 その点、鍵盤を弾けば正しく音が出るというピアノの特性上、このシンプル過ぎるテーマメロディならば、リズムに集中させてくれます。

 

もう一つ余談ですが、ペトルチアーニは、Cジャムなのに、Fでやっています。


 

② モーニンとサヴォイの二つは、Cジャムの3小節目でも出てきた、付点4分音符から八分音符の裏入りという音形が、テーマメロディとのコールアンドレスポンスで登場します。


 モーニンは、ピックアップ(アウフタクト)のフレーズのため、若干小節感覚が分かりにくいですが、非常に有名で知っている人も多いと思いましたので、紹介することにしました。


楽譜

↑モーニンのリズム譜。▲がメロディー、×がレスポンスのリズム。このレスポンスの方のリズムを練習するのが良い。※臨時記号は省略


 モーニンはたっぷりの3連符系のスイング感を感じると良いでしょう。四分音符ひとつひとつが「ウーダ、ウーダ、ウーダ、ウーダ」とか、「デューダ・・・・」のようになります。


 そして、「伸ばしている所」が表拍で、「ダ」が裏拍に来る様なリズムの感じ方になります。つまり、伸ばしている間が3連符の2個、裏拍の「ダ」が3連符の3つ目のイメージです。厳密には、演奏によってリズムの揺らぎがあると思うので、音源に合わせて歌うと良いでしょう。


 他の感じ方としては、文字だけで上手く伝わるか分かりませんが、「ワァン(1)、トゥーウ(2)、さぁん(3)、しーい(4)」のように、音節を更に細かく母音まで分解して3分割するイメージです。それを3連符のように感じながらカウントします。


 3は、「スリィ」のようにするよりも、日本語の方が3連符を感じ易いので、変更しています。4も英語でも行けますが、多分日本語の方が、感じやすいと思います。特にこれをお読みのあなたは日本語ネイティブの可能性が高いですし。


 あとは、「いちと、にいと、さんと、しいと」みたいに感じると良いという説もあります。「と」が三連符の3つ目ですね。ただこの感じ方は、個人的にはしっくりきません。カウントの感じ方に個人差があるのかもしれないことは知っておくと良いでしょう。


 

 次にサヴォイです。

 サヴォイは上に挙げたガーランドの音源だと、少し速すぎて、たっぷりスイングを感じるのは難しいかもしれません。その場合は、モーニンだけでも十分効果はあると思うので、取り組み優先度を下げて問題ないと思います。ちなみに、ガーランドのキーは、ジャズスタンダードバイブルとは異なるFメジャーでやっています。


楽譜

 ※臨時記号は省略


 サヴォイは偶数小節の3、4拍目から奇数小節の頭に向かって弾くパターン、モーニンは、その逆となっています。レスポンスの部分だけでなく、テーマのメロディの後も、ずっとリズムを感じ続けて、その流れのなかで、「『ウ~』ダウ~、ダッ」「ジャ~アん、ジャッ」(?)を合わせられるようにしましょう。


 この、「ジャ~アん、ジャッ」の、「ア」で裏拍を、「ん」で表をしっかり感じることが大事。「ジャ~~ぁジヤ」にならないように気を付けましょう。


 いずれもA部のところだけに登場するため、B部のメロディには出てきません。


 こちらも、Cジャムと同様、しっかり付点四分音符を感じて、「ダ」とか「ジャ」の裏入りを意識しましょう。また、Cジャムで解説した通り、リズムの練習の場合はコードで弾く必要はなく、単音でコードのルート音などを弾いたり、手拍子で全然問題ありません。大切なのは、リズムを意識することです。


※おまけの例としては、枯葉の1、3小節目などの伸ばしたところで「ジャ~アん、ジャ」を入れる場合もあります。ただこれは、お決まりと言うほどではなく、一歩間違うとわざとくさくなるので参考程度です。


 

③    Stolen Momentsはジャズを聴かない人にとっては耳馴染みが無く、言われなければ気付かない可能性が高いということで、紹介することにしました。


 この曲のポイントは、後半8小節で登場する裏入りの連続です。


楽譜

 ※臨時記号は省略


 この曲は遅めのミディアムテンポで、テーマのスイング感は3連符系で感じることが多いと思います。よって、モーニンと似たイメージで、四分音符は「ウーダ、ウーダ、ウーダ、ウーダ」とか、「デューダ・・・・」とか、数字で挙げた上の例のように感じることになるでしょう。


 まずはテーマを通して「ウーダ・・・」などを感じられるように練習します。これはまだ楽器は必要ないです。


 その次に、連続裏入りのところで、自分が感じているリズムの裏拍と、和音の切り替わが一致するようにします。


 それが出来たら、最後に、楽器や手拍子で音源と合わせます。


 最後の2小節については、音源によって若干アクセントが違う場合もあります。譜面は一例ですので、ここの部分は参考程度としてみてください。


 

 以上、リズム練習に向いている曲をご紹介しました。


 繰り返しになりますが、この中から更に一つを選ぶならば、まずはCジャムだと思います。また、上記のYouTubeリンクは一例ですので、もし他の音源で、違うテンポなどで合わせたくなったら、ご自身で検索してみるのも良いと思います。


もし分からない点などございましたら、お気軽にお問合せからご連絡下さい。


今回の記事があなたの練習の役に立てば幸いです。


ジャズピアノ研究室 管理人

田中正大


もっとジャズについての情報を知りたい方は是非メルマガ登録をどうぞ!


 
 
 

Opmerkingen


bottom of page