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動画投稿サイトのレッスン動画の是非について

  • 2024年8月4日
  • 読了時間: 12分

 

  こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。


 ご存知の方もいるかもしれませんが、動画投稿サイトのレッスン動画に関して、ひと騒動が起きています。トランペットのエリックミヤシロさんと、サックスの本田雅人さんが、それぞれYouTubeとXに、巷のレッスン動画に関する意見を投稿したことに始まり、ベーシストのミートたけし?(川村竜)さんが、YouTubeチャンネルでその話題を扱ったという経緯です。


 それ以外にも、本田さんの投稿はかなり過激だったので、その内容について取り扱ったYouTubeチャンネルもあるようです。


 伝言ゲームは避けたいので、内容が気になる方は自分で調べて頂ければと思いますが、エリックさんと本田さんの投稿はじめ、ちょこちょこ出てくるはずです。


 エリックさんの方は、「みなさんへメッセージ」という感じのタイトルの3分程の動画で、本田さんの方は、7月25日の投稿です。


 二人の投稿の温度感がそもそも全然違うので、両方揃えてまとめて要約すること自体が困難ですが、一応、すごく端的に言うと、無料の動画レッスンに対する、警鐘というか、注意点というか、そんな内容でした。


 上記の経緯を踏まえて、今回の記事ですが、あなたがジャズピアノに取り組むことについて、客観的に振り返るきっかけにでもなってくれれば良いかなと思っております。動画チャンネルの無料動画を参考にすることや、練習への取り組み方について、私なりの考え方を簡単にまとめています。


 さて、私はこれまで、ネットやSNSの話題を取り上げたり、時流に乗ったネタを扱うのを避けてきました。理由は簡単で、そういった内容は消防法の危険物3類くらい取り扱いに注意しないと、あっという間に本能寺の変のような大火災に発展するからです。(まあ、今の所、このサイトの規模ならそんな心配ないかもしれませんが。)


 しかし今回は、発信者の影響力があまりに大きかったです。何せ、あのお二人でしたので。私自身、動画でレッスンを配信しているわけではありませんが、サイト主旨として似ている部分もあります。この騒ぎを横目で眺めるだけにするか迷いましたが、さすがに触れておくことにしました。ちなみに、エリックさんとは、ライブ後のサイン会でお話したこともありますが、本当に動画やテレビで見られる通りの、(あのイカツイ見た目から想像できないくらい)とても優しいお人柄が伝わってきました。


 で、この一連の騒ぎですが、基本的に考え方の問題だと思うので、正しいとか正しくないとか、議論をするつもりも、挙げられた何某かの意見について反対したり、賛成意見を表明するつもりはありません。そもそも、いちいち全ての意見を咀嚼して理解し、自分に落とし込む余裕がありません。


 話題を扱っていながら、それはずるいと感じる方がいらっしゃる場合、ここまで読んでいただいた所恐れ入りますが、画面を閉じて頂いた方が良いかと思います。


 さて、件の投稿を見て何となく思ったのが、レッスンや勉強を目的として動画を視聴している場合は、自分から見て「上手くない」「勉強になることをいっていない」「間違っているように思う」人の動画を見る人は普通いないだろう。ということです。


 ここについて以下、私なりに掘り下げていきます。


 まず前提として、今まで明言を避けて来ましたが、あえて言います。

 私程度のレベルの目から見ても、ひどいジャズピアノレッスン動画は多いです。(ここで不快になった方も、できればもう少しお付き合い下さい。後でこの内容についてもう少しフォローしますので。)

経歴やプロフィールにもっともらしいことを書いていても(例えばCDを出している、どこの学校を卒業した、誰々と共演している等)、明らかにジャズが上手くない人は存在します。


 ところが、ピアノというのは、クラシックをちゃんと学び、楽器のコントロールができていると、ピアノ自体はよく鳴っていたり、指は動くので、少なくともピアノの演奏自体は下手には聞こえません。


 ところが、幸か不幸か、良いジャズの音源をたくさん聴いていると、上記のようなジャズは本当にかじった程度で、楽器のコントロールが上手い人の演奏は分かるようになってきます。逆に言えば、ジャズに慣れていないと、ジャズのレベルについては分かりにくいということでもあります。


 そして、ここまで、私自身のことを棚に上げてきましたが、私の種々の記事や投稿内容はどうでしょう。もしエリックさんや本田さんではなく、小曽根さんや山中千尋さん、海野さんあたりがたまたま私の投稿を見たら、「こりゃいかん」と思うでしょうか。そこまで行かなくても、優れたレッスン動画を出している仕事で演奏しているピアニストさんはいらっしゃいます。その人達から見たらどうでしょうか?


 ここまで考えたときに、見ている側が、動画やコンテンツを見ることで「学ぶことがあった」「上手くなった」と感じるなら、需要はある。と考えて良いのではないか。と思っています。


 もう少し補足すると、私が「ひどい」と評したジャズピアノレッスン動画でも、人によって、私の内容よりもコードやジャズのことを学べた。ジャズを身近に感じることができた。

と思う人がいれば、私よりも役立っていると言えるのです。


 そして、そのひどいレッスン動画に限らず(私の投稿含め)、ある人が上達した後にそれらを見返した結果、「間違っている」「ここで知った内容に惑わされて回り道してしまった」ことに気付いても、それはそれで、その間違いや遠回りに気付けるだけの実力がついて、成長した。ということです。この経験もまた、更なる上達のための栄養です。


 訳も分からず色々な動画や投稿を見て、遠回りしている場合でも、それはそれでその人の選択だということです。


 ここで、「変な内容をインターネットの場に投稿する行為に対しての責任はないのか?」という反論はあるでしょう。


 これに対する私なりの回答は、以下の通りです。

Time is Moneyを考えた時、無料の動画を見て遠回りしてしまう危険と、レッスン料や教本の購入などのコストを払うことで、その遠回りを回避できることを天秤にかけた際に、「コストの抑制を優先させて、遠回りする」行為を選択しているのは、他でもなく学習者だ。ということです。


 ピアノを弾くことによって何を得たいのか。そのために、どこまで何に時間を割けるのか。(お金に限らず)どれだけのコスト、労力を払えるのか。これらの多くの変数の中から、自分にとって最高のピアノライフを獲得するための落とし所がどこになるのかは、自分にしか分からないと思うのです。また、それはピアノの上達段階や、普段の生活状況によっても変化していくものではないでしょうか。


 確かにプロ志向の人が、無料動画で得た知識から変な癖をつけて楽器を習得してしまったりしては問題でしょう。しかし、そもそも、プロを目指す様な人が、どこの誰のものかも分からない無料動画から学ぼうと思っている時点で、私はその姿勢に疑問を感じます。というかそんな人いないと思います。


 しかし、一般の楽器愛好家ならば、様々な条件から、自分にとって一番良い楽器との向き合い方、音楽の取り組み方を見つけていくために、多くの変数から落としどころを見つけるわけです。


 クオリティが残念な無料動画の存在は、音楽に限った話ではなく、どこの業界もそうです。私の行きつけの美容師さんも、美容系の動画において、そういった問題を指摘しています。私も、音楽以外の好きな分野で、そういった傾向を見出します。何かあなたが得意な分野、良く知る分野の動画を見てみると、このことがよく分かるのではないでしょうか。無料で誰でも投稿できる動画のクオリティの玉石混交は、必ず頭に入れておかなければなりません。


 しかし一方で、あえて嘘偽りを拡散して、騙されている人を見て悦に入るような悪趣味な動画発信者は普通いないでしょう。


 ですから、上記に述べた通り、無料動画のメリットデメリットも織り込んで、自分のやりたいこととの落としどころを探った結果、その動画を見るという選択は、もはや他人がどうこう言うことではないのです。

(併せて一つ注意点を申し上げておくと、見ていて楽しいのと、正しい情報、使える情報かはまた別です。笑えるバラエティ番組とニュース番組の違いがイメージしやすいかもしれません。)


 そして、ここまでの内容を踏まえて、これだけははっきりお伝えしておきます。

 厳しい言い方で反感を覚える方がいらっしゃるかもしれませんが、上達度合いは、上達のために掛けた労力に相関します。(非常に高いレベルでの頭打ちは別として。)


 言い方を変えると、楽に、手っ取り早く、勉強もせず、無料動画を見ていれば上手くなる、ということは無いです。残念ながら、それ相応の結果になります。やってみなければ分からない。と思う方は、是非、その方針でやってみて頂ければ良いでしょう。


 既に何度も述べた通り、どれだけ上手くなりたいと考えているのか。そのためにどの程度のコスト、労力をかけるかはその人次第です。別に、楽器に触っていられれば幸せと言う人に、それ以上を要求しても仕方のないことです。


 上手い人が人間として偉いわけでもなく、上手くなる程幸せかと言うとそうとも限らないでしょう。上を見ればきりがなく、上手い人には上手い人なりの苦労もあるでしょう。具体的なエピソードは割愛しますけれども。


 しかし、手っ取り早く上手くなりたいけどお金も時間もかけたくない。アドリブをしたいのに、人前での演奏で失敗したくない、勉強はしたくない。といった願望は、有名になりたいけれど、絶対に誰からも嫌われたくない。低リスクでハイリターンの投資をしたい。というのと同じで、相反することです。


 私レベルのアマチュアピアニストが簡単な一つのテーマについて無料ブログで情報提供している場合すら、多少の文字数を要し、読む側にはそれなりの時間コストを要求しています。そのコストが提供されている情報に見合わない、あるいは、自分の上達したいレベルに対して過剰コストだと考える方には読まれないということです。


 無料ブログなので情報を獲得するためのコストはゼロに等しいですが、言い換えれば「読むだけ時間の無駄」だったら、まさに読んだ時間の分、マイナスになってしまいます。冒頭で述べた、「上手くない」「勉強になることをいっていない」「間違っているように思う」人の動画は見ないことに繋がるかもしれません。それでも、色々見たり、ジャズを知った後にまた見て頂き、意外と田中のブログは役に立つ。と思って頂ければ嬉しいですね。


 少し脱線しかけましたが、同時に本当に難しいのは、コストをかければいいと言うわけではないことです。せっかくかけたコストも実は見当違いである可能性もあります。例えば、メルマガ登録者様にお送りしている内容に、これまで私が受けてきた様々なレッスンの特徴を説明したものがあります。実に様々なレッスンがあり、生徒によって、合う、合わないもあるでしょう。あまり合わずに、時間だけ過ぎてしまった場合でも、それは必要な投資、経験だったと考えられるかどうかは難しい問題かもしれません。


 また、マーク・レヴィンのジャズセオリーはマニアの間で知らない人はいない書籍です。一冊8000円ほど「しか」しませんが、これをいきなり初心者に読ませれば、ジャズが嫌いになるでしょう。

あるいは、教本も買ってばかりで、内容を理解、吸収しなければ仕方ないわけです。


 ですから、矛盾するようですが、ネットで簡単に、無料で手に入る情報にアクセスしたくなるのは当然の心理だというのも理解できます。だからこそ、私のブログ記事を色々と読んで欲しいのですが。


 

大分長くなってきましたが、この記事、やたら無料とか有料とかの話がいやらしいと感じた場合、申し訳ないです。


 今回はセレブ妻の金持ちマウントということではなく、お互いの合意の元に発生する契約上の、価値交換という視点ですので悪しからずご了承下さい。300円で電車に乗って運んでもらうのは、自分で移動するより300円払う方が良いと考えるから300円払うというのと同じで、要するにタイムイズマネーの考え方を中心に述べています。そこまで複雑で専門的な経済の話でもありません。


 さて、ここまで読んでいただき、私の意見を聞かされただけでは割に合いませんので、少しだけジャズ情報を記載しておきます。


 無料動画だけでは心もとなく、多少の労力は惜しまないけれど、ネットという情報の海に溺れそうという方に、私なりのささやかなヒントを提供します。ATNから出ている教則本は(訳書で、価格高めというのはありますが、)基本的にクオリティが高いです。これまで、他の記事でも何度か言及しています。


 そのATNの教則本で、公式のレベルチャートが出ているので、それ見てご自身で興味がある教本を探してみるもの一つだと思います。



 少なくとも、質の分からない無料動画を漁って密度の薄い時間を過ごしてしまったり、動画の内容に惑わされて遠回りしてしまうことが嫌だと考える場合は、それを避けるのに見合う投資になる可能性は高いと思います。


 最後にまとめになりますが、無料動画というのは、誰でも簡単に投稿ができ、見る方も気軽に情報を入手できます。しかし、その一方でそのクオリティは玉石混交であり、これは音楽に限った話ではありません。そのメリットデメリットを十分に理解した上で、無料動画を視聴し、自分のやりたいこと、割けるコストとの落としどころを見つけるのは自分自身にしかできません。無料動画の内容が役に立つと思って試聴する限りはその人にとって有益な内容です。


 将来的に、その行為が遠回りだったと気付いたとしても、それは自身の成長としてとらえるのが良いでしょう。なぜならばその遠回りは、当初、無料動画の手軽さというメリットを選択し、遠回りを回避するためにコストを払うことを選択しなかった結果だからです。


 上達は、かけた労力に相関しますので、簡単に、手っ取り早く上達することは無いと思っておくのが良いと思います。


今回の内容があなたの役に立てば幸いです。


PS

でも少し違った切り口で似た様な内容を扱っていますが、この3か月ほどで、私も随分と思考が穏健で寛容になったのかもしれません。気のせいでしょうか。


ジャズピアノ研究室 管理人

田中正大



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