ジャズ理論 Ⅱ7とディミニッシュについて
- 2024年7月13日
- 読了時間: 7分
こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。
以前、I’ll close my eyes型のコード進行がいかに、よくあるジャズスタンダードの練習に適しているか解説した記事を書きました。(リンクは記事下部)
そこで、この進行の弱点として、「Ⅱ度(にど)セブンス」と「ディミニッシュ」が出てこない。ということを説明しましたが、今回は、その部分を補う内容をお届けします。
この記事を読むことで、いわゆるツーファイブワン進行だけでは抑えきれない部分の理解につながるでしょう。かなり理論に寄った記事で、個人的にはジャズの楽しさお伝えするという観点からすると気が進みませんが、たまにはこういった記事も有りだろうとも思いますので、もし気になる方は、是非参考にしてみてください。
Ⅱ度セブンス(Ⅱ7)とは、文字通り、キーの2番目のセブンスであり、CメジャーならD7、FメジャーならG7、以下同様に、B♭でC7、E♭でF7、A♭でB♭7などを指します。
一般的には、A列車の3、4小節目、イパネマの3、4小節目、グレーターラブの5、6小節目、But not for meの1小節目、ドナリーの3、4小節目などに登場するコードです。
原則、同じルートを持つm7コードに進行すると考えておいて間違いないでしょう。ついでに余談ですが、Aトレをボサノバにしてしっくり来やすいのは、前半はイパネマとキーが違うだけで、概ね同じ進行だからです。このイパネマの進行が、ボサノバのイメージを聴く人に植え付けているのだと考えています。
話を戻して、このⅡ7は、#11度のテンションを伴い、リディアンセブンスのスケールが良くサウンドします。スケールの構成音の考え方はいくつかありますが、以下の1つ目か2つ目が素直でしょう。
・ミクソリディアンの4度を半音上げる(#)
・リディアンのメジャーセブンスを半音下げてセブンスにする
・メロディックマイナーの第4モード
※3番目はかなり「the Jazz Theory」的な考え方で少し特殊なので、気になる方は、記事の最後のリンクから「詳説トライトーンサブスティテューション」の記事をご覧ください。もう少し拡張すると、裏コードのオルタードでもあります。
具体例として、Dミクソリディアンは、Gメジャースケールの5番目であり、ファ#一つのスケールです。その4番目、ソも#して、ファとソの二つが#して、できあがりです。
一方、Dリディアンは、Aメジャーの4番目ですので、ファ、ソ、ドを#したスケールになります。ここのメジャーセブンスのド#を半音下げて、ドにしたら出来上がります。
以上、両者は当然同じ構成音です。スケールの構成音は、以下の譜例に載せておきますので、音源をコピーするときなどに、この音使いになっているか確認するのにお使い下さい。

サウンドとしては、Ⅱ7のルートの全音上の音(9th)をルートとしたメジャートライアド(D7ならば、E)を強調すると、かなり、モダンな響きを得ることができます。このような考え方はアッパーストラクチャートライアドに通じます。
以下は、Oscar PetersonがAトレのD7の所で弾いている、Eトライアドの例です。(「in Russia」より)

ちなみに、Ⅱ7ではホールトーンスケールもサウンドします。ホールトーンは、その名の通り、全ての音の感覚が全音でできているため、スケールの構成音としては、2パターンしかありません。ただ、ホールトーンはリディアンセブンスよりもサウンドが単調で、モダンなサウンドが鳴りにくく、私は上手く弾くことができません。
テンション表記としては、+5を使います。音は♭13と同じですが、♭13とすると、オルタードと間違えるため、+5とします。
フィニアスは、#11のソ#を強調してはいますが、Eトライアドではないです。こうすると、トライアドよりオールドな雰囲気になりますし、ホールトーンと区別できなくなります。より、Aトレのあの有名なイントロに近いサウンドになります。(「I Love a Piano」より)

つづいて、ディミニッシュです。
ディミニッシュスケールについては、先ほど上で一度挙げた、「詳説トライトーンサブスティテューション」にて、説明をしています。詳細は、是非ブログ下のリンクから、ご確認下さい。
ここでは再度、スケール構成音を載せておきますが、全音と半音を交互に繰り返すスケールです。ややこしいのが、まず「半音/全音」の順番で繰り返すのが、ドミナントセブンスのところで弾ける、通称「コンビネーションオブディミニッシュ(コンディミ)」と呼ばれる方です。
そしてもう一つが「全音/半音」と繰り返す方が、「レギュラーディミニッシュ」です。



今回のディミニッシュは、ドミナントセブンスの所における、スケールの選択肢(コンディミ)としてのディミニッシュではなく、コード自体がディミニッシュである場合を説明します。
大きく分けて、ルートが下がっていくパターンと、上がっていくパターンがあります。
まず下がっていくパターンとしてよくあるのが、何度目の登場か分からない「いつか王子様が」の9小節目からのDm7/C#dim7/Cm7という流れです。
この場合は、C#のレギュラーディミニッシュであり、C#から「全音/半音」で構成されるスケールを弾くことになります。スケールの音を羅列して、ディミニッシュ感を出しすぎない方が良いかもしれません。と言いたいところですが、以下のウィントンケリーの様に、思いっきり、スケール羅列していることもあるので、一概に言えないところが面白いし、難しいですね。(「Wynton Kelly !」の別テイクより。アルバムタイトル他にも呼び方あるかもしれません。)

他にも、All the things you areの後半の最後の部分、Ⅳ△7からB♭m7へ下がっていくところの、Bdim7がレギュラーディミニッシュになります。同じく、Bから「全/半」で構成される方のスケールになります。(「A Tribute To Cannonball」より)

一方で上がっていく方ですがこちらは、例えばLike someone in loveの最後から5小節目手前のところになります。例えばKenny Barronのフレーズですが、♭4個で弾いているので、Bdim7から、Cm7へ進行しています。

このように、ルートが上行する進行では、Bdim7をG7の様に考えて(まさにトライトーンサブスティテューション)、普通のファイブワン、ドミナントモーションと考えても、スムーズに弾くことができます。
※その場合は、G7の「半/全」のコンディミ、と考えることになります。紛らわしいのでご注意下さい。ただ結局スケールの構成音は同じですが。
さて、ケニーバロンは、かなりしっかりディミニッシュのサウンドを弾いていますね。
せっかくディミニッシュなので、通常のドミナントモーションよりも、ディミニッシュ感を出すかどうかは、好みに依るかもしれません。あなたが好きなピアニストはどのように弾いているか、確認してみましょう。※更にちなみに、ベーシストはG7とあまり区別していない、というか多分G7で解釈している感じのラインになっていますが、特に違和感はないです。
以上、簡単になりますが、I’ll close my eyesの記事の補足でした。Ⅱ7やディミニッシュでも、フレーズのアプローチやターゲットノートに関する考え方は同じです。ここでは、基本的なスケールの考え方を記載し、いくつか実際のフレーズの譜例を載せておきました。今回の内容を元に、耳コピするときの役に立てて頂ければ幸いです。
最後にまとめると、Ⅱ7は、原則ルートが同じⅡm7へ進行し、スケールはリディアンセブンスがよくサウンドする。テンションは#11で、9thをルートとするトライアドを弾くと、それをよく表現できます。
一方、ディミニッシュは、「半/全」のいわゆるコンディミと、「全/半」のレギュラーディミニッシュがあります。今回はレギュラーディミニッシュを扱いました。下降形と上行形がありますが、いずれもレギュラーディミニッシュを弾きます。上行形の場合、トライトーンサブスティテューションで、ドミナントモーションの様に考えることもできます。どのようなサウンドを選択するかは好みになるでしょう。
ジャズスタンダード「I'll Close My Eyes」型のコード進行が、ジャズの練習に適している理由
有料級ジャズ理論 詳説トライトーンサブスティテューション
ジャズピアノ研究室 管理人
田中正大
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