ハンプトン・ホーズのThere will never be another youのアドリブについて解説します
- 2024年9月8日
- 読了時間: 16分
こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。
I’ll close my eyesの音源のウィントン・ケリーのアドリブフレーズの簡単な解説をしましたが(コチラ)、比較として、ハンプトン・ホーズのThere will never be another youのアドリブも取り扱うことにしました。
アイルクローズはジャズのツーファイブワンを練習するのに非常に適した曲ですが、決してジャズジャイアントクラスの音源が多いとは言えず、またⅡ度セブンスなどが登場しないのが惜しいところ。というのは、既に以前の記事で述べた通りです。
それを補う曲の候補筆頭として、アナザーユーがあるわけですが、ハンプトン・ホーズはこの曲をFメジャーで演奏しているのです。圧倒的にE♭メジャーで演奏されることが多いなか、結構貴重と言えると思います。ということで、曲の前半部分は、ほとんどアイルクローズと同じであり、それどころか、Ⅱ度セブンスも登場するというおまけつきです。
探せば他の人の音源もあるのでしょうが、手元にあるアナザーユーのちょうどいい音源はこの位でした。しかも、YouTubeにも音源がありましたので、便利な世の中です。
また、ちょうどテンポ感とか雰囲気も似た感じになっていますので、これら二人のアドリブを比べてみることで、ほぼ同様のコード進行において、どのようなアプローチの違いがあるのか比べてみると面白いでしょう。
それと同時に、自分のフレーズ練習の参考にしたり、どういったアプローチが自分にとって弾きやすいのか?覚えやすいのか?好きなのか?ということを考えるためにも、この様な聞き比べは有効だと思います。
さて、ハンプトン・ホーズは(時期によるいくらかの違いはあるものの、この音源の頃は)バップを基調とした、お手本的なフレーズの宝庫だと思います。もう少し具体的に言えば、リズムが明確で歯切れがよく、コードの変わり目とフレーズによるアプローチが分かりやすいということです。正直、フレーズに関しては、世間でよく「初心者がコピーすべき」と言われるウィントン・ケリーより、よほど初心者の学習に向いていると思うのは私だけでしょうか。(是非、今回、比較の一端をお楽しみください。)
曲のテンポが上がると若干、手癖が多い傾向があるように感じますが、逆にそれによって、同じフレーズに何度も遭遇するので、覚えやすいというメリットもあるでしょう。
それでは、早速見ていきましょう。また、コード進行ですが、基本的に黒本などのよくある進行をE♭からFメジャーに移調したもので考えて良いかと思います。細かい部分や解釈が分かれる部分などは、可能な範囲で、フレーズの解説部分で補足したいと思います。あと、左手のバッキングは譜面作成が大変なので省略です。
<1コーラス目>


<2コーラス目>



<3コーラス目>



・-1小節:ブルーススケール(ミ♭)から、ペンタトニック(ラドレ)的なフレーズで、半音(ミ)から、1小節頭にアプローチ。という理屈になりそうですが、1、3拍で綺麗にコードの主要音を追っていて、響きが分かりやすいです。
・1~2小節:1小節の最後から2小節の1拍表に向けてクロマチックアプローチです(レ、レ♭→ド)。2小節目の4拍裏はゴーストノートにもならずに鳴っていませんが、頭の中ではファ#が鳴っていてもおかしくないでしょう。するとラ、ファ#、ソで3小節目の3度の音へディレイドリゾルブになります。
・3小節:ここの右手のフレーズだけでは判断できませんが、左手の和音、そして以降のフレーズからすると、ハンプトン・ホーズはここのコードを「♭5」ではなく普通のEm7として捉えています。ちなみに、ベースは♭5(シ♭)しているので、こういった齟齬は良くも悪くもジャズの自由さでしょう。別に違和感はありません。
・4小節:3拍目の3度のド#に向けて、レ、ドとディレイドリゾルブしています。この音形は非常によく出てきます。そのあと、シ♭、ソ、ソ#は5小節目の1拍表のDm7の5度のラに向けた、典型的なディレイドリゾルブです。
ちなみに、この曲ではありませんが、ハンプトン・ホーズはGm7へ行くD7においては、このA7のフレーズを平行移動した、以下のフレーズをよく使います。

・5小節:半音下のド#からアプローチして、3連符のアルペジオのレ、ファ、ラ。典型的なビバップのリズムです。その後、ド#、ミ、レも、レに向けたディレイドリゾルブ。A7が一瞬挿入されているような響きと感じることもできます。直後のCm7も同じ理屈です。「レラ」と八分音符でフレーズ終了するのも典型的なビバップです。
・7小節:3拍目のシ、レは4拍目のドに向けたディレイドリゾルブ。繰り返しですが、理屈としては、一瞬G7が挿入されているという響きになっているともいえます。(普通そこまで細かい動きは考えません。)
・9小節:5小節目と同じ音ですが、今度は、B♭M7なので、3度の「レ」への半音下からのアプローチ後のアルペジオになります。
・10小節:曲のコード進行やベースラインからすると、記載のコード進行ですが、フレーズ的には4小節目のA7と同じ構造です。まあ、E♭7とA7は裏コードですし、次のコードからすると、綺麗なフレージングです。
この次にも説明しますが、11小節がDm7だとすれば、A7→Dm7という普通の進行になります。
・11小節:アイルクローズだと、ここはⅠM7になると思いますが、アナザーユーだと、ここのコードはⅢm7だったり、Ⅵm7だったり。少し違いが出てきます。
アナザーユーは黒本だと、Ⅵm7ですね。とはいえ、2つのコードは似た様なものです。いずれもトニックで、響きとしては、ベースラインに依存する程度の違いと言えそうです。実際、コーラスによって、ベースはⅢm7のAm7に行っています。で、今回のピアノのフレーズはAm7というよりはDm7的な動きをしているので、こちらで表記しています。また出てきましたミ、ド#、レ。
・13~14小節:G7となると、アイルクローズで出てこないⅡ7となり、リディアンセブンスが特によく合います。この後、毎コーラスそうですが、ベースはまず「レ」に行っているので、解釈が難しいですが、少なくともここではピアノのボイシングはG7(#11)を弾いているようです。また、アルペジオをレファラ「レ」と弾いて、G7の4度のドを避けているので、G7でよいと思います。
ということで、5度のレの半音下からアプローチしてアルペジオ弾いて、4拍目はリディアンセブンスの特徴である#11となります。
14小節は、最初の2拍がG7で、2拍表に向けて、ド、ラ、シとディレイドリゾルブ。後ろ2拍の3、4拍目がGm7を先取りしていると考えるのが素直かもしれません。15小節目の1拍表に向かって、ド、シ、シ♭、ラ、ソという、綺麗なラインが出来ています。
・15小節:3拍目のファ#、レは、マイナーメジャーセブンス(GmM7)と考えても良いし、D7が一瞬挿入されていると考えても良いと思いますが、そこまで理屈でがちがちに理論武装するほどのことではないと思います。ここまでにも既に出てきていますが、ハンプトン・ホーズはm7の時に、この「mM7」の響きをよく弾きます。クリシエと考えることもできるし、本当に細かい理論は考えやすいように、個人で後付けで十分でしょう。
・16小節:2拍目のミソは完全に鳴っていないゴーストノートですが、1拍目のファ、レ#からの3度へアプローチしていると考えて良いでしょう。3度から♭9(レ♭)へ跳躍は、典型的なビバップのフレーズです。アルペジオで3、5、7、♭9のように行く場合と、3度から♭9へ一気に飛ぶ場合などがあります。
・17~18小節:17小節4拍表の「ソ」が鳴っていないゴーストノートですが、3拍表からレ、シ♭、(ソ)、ソ#となって、18小節1拍表の3度ラへのアプローチは、典型的なディレイドリゾルブです。
そして、18小節目の3、4拍は、2小節目と全く同じアプローチで、19小節目の「ソ(Em7の3度)」へアプローチしています。
ここまででお気づきの様に、ハンプトン・ホーズはゴーストノートが多く、それも、比較的鳴っているものから、実際の音はほとんど、あるいは全く鳴っていないけど、頭の中では鳴っていると考えられる音まで、実に様々です。こういった微妙な違いは、音源を聞いて判別するしかありません。
※ちなみに、その点についての関連記事はこちら。
「ジャズピアノのフレーズ練習と運指の関係」はこちら
「ジャズのスイングの弾き方を考える。八分音符は跳ねているのか?」はこちら
・19小節:3小節目では右手のフレーズでは分からず、左手を聴く必要がありましたが、今回は明らかにEm7であって、シが♮ですね。
・20小節:19小節の4拍裏拍が、A7の5度のミへの半音アプローチと考えて良さそうです。裏拍を連続してスイング感がありますが、骨格としては、ド#とミから、Dm7のルート音である「レ」へディレイドリゾルブしていると言えるでしょう。
・21小節:2拍目から3拍目表の「ソ、ミ、ファ」という3度の音に向けたディレイドリゾルブに注目。次の「ファ、レ、ミ」も次をG7で捉えるなら、13度「ミ」に向けたディレイドリゾルブになります。左手の音的には、G7と考えて良さそうです。
・23~24小節:Cm7からF7一発で取って、Dのメジャートライアドを弾いています。F7でDメジャーというのは、トライトーンサブスティテューションでディミニッシュを共有しているからです。ちなみに、他の二つはBとA♭のメジャーです。FとB、DとA♭がそれぞれ裏コードのペアです。詳細はこちらの記事を参照ください。「有料級ジャズ理論 詳説トライトーンサブスティテューション」
・25小節:4拍裏のソ#はゴーストノートですが、実際はラを弾こうとしているかもしれません。というのは、ハンプトン・ホーズは3、5、6、7というフレーズを結構弾いているのです。つまり、33小節目のFM7や、41小節目のことも考えると、本当はラを弾きたかったのではないかということです。
もしラならばみんな同じ音形になります。ちなみに、FM7ならラドレミです。もし意図的にソ#であれば、むしろラ♭の方が適切かもしれず、B♭m7を先取りしている、と無理やり考えることもできそうです。
・26小節:1拍目のド、ラは2拍目表のシ♭へのディレイドリゾルブ。3、4拍目は27小節目の1拍表に向けて、よくあるフレーズを弾いています。E♭7で考えるならリディアンセブンスとなります。ただしあえて、トライトーンサブスティテューションと考えるなら、C7の♭9と#9というよくあるフレーズから次のトニック(27小節はⅢm7としました)への解決と捉えることもできそうです。この♭9と#9はこの後も良く出てきます。
要するに、細かいことはさほど気にすることではありません。こういったことを数式みたいに逐一説明しようとしても、理論先行の頭でっかちになると思われます。
・27小節:FM7と捉えるか、Am7と捉えるかによって、若干音の解釈は変わるものの、どちらも響きはほぼ同じです。完全なアルペジオではありませんが、それに近いです。3拍表にソを持ってきて、そこからファ、レ、ミ♭というディレイドリゾルブをしています。このソの位置を考えると、ラドレミという音形の収まりが良いです。もしFM7と捉えるならば、25小節目で説明したように、3、5、6、7というフレーズになります。
・28小節:1拍表にミが来ていますが、Bm7♭5なら、11度、1小節全部E7と捉えるならルート音です。まあ、テンポも速めですし、どちらでも良いでしょう。ちなみに、この後の2コーラスもミに着地していますので、そういう音の見方をしているのだと思います。最後のレ、レ♭は、29小節目のAm7の3度のドに半音アプローチです。
・29~31小節:少し細かい進行ですが、F一発で取って、重音を使ってブルージーさを出しているというように、難しく考えすぎない位で良いでしょう。
・32小節:FM7に解決した後ですが、33小節目のFM7へ向けて、C7になっていると考え、オーギュメント(#5)のアルペジオを弾いています。響き的には、ホールトーンスケールと考えます。
・33~34小節:33小節目はメジャースケールの音を弾いているだけですが、表拍に綺麗にコードトーンが置かれています。また、34小節目は先ほどの27小節目と全く同じ音使いです。今度は着地のミが、Em7のルートになっているのが違いです。良い意味で、細かいことは気にせず、大きくコードを捉えていることが伺えます。今回はAm7ではなく、FM7となるはずですので、1、2拍目は3、5、6、7になります。
・35~36小節:25小節2拍表のファはおそらくミスタッチでしょう。本当は単音でミにしたかったのではないでしょうか。まあ、採るに足らない話です。
上と下でミ、ミ♭、レ、ド#という半音の流れが出来ています。
ド#はA7の3度で、次のDm7のレへの導音になっています。オクターブや似た音型を使って、見事にド#にアプローチしたフレーズです。
・37~38小節:また出てきました、この形。38のミ、ド#、レもおなじみです。
・39~40小節:Cm7は「シ♮」CmM7を経由した、クリシエラインになっています。テナーマッドネスのテーマと似ています。40小節では1拍目のシ♭、ソ#から2拍表のラへアプローチ。♭9と#9の装飾的なフレーズはバップの典型的なフレーズです。
・41小節:先ほどから何度か言及した、3、5、6、7の音形のあと、これもそろそろおなじみの、ド、ラ、シ♭。そこから、スケールでまっすぐ、42小節目のB♭m7の3度のレ♭へ。
・42小節:43小節目に向けたフレーズ。アイルクローズでもそうですが、E♭7がFM7とか、Dm7とかAm7のようなトニックのサウンドに行くときは、解釈がいろいろできます。細かいことは気にせずに、ラとか、ドといったポイントとなるターゲットの音に、綺麗にアプローチしているフレーズをよく研究するのが良いでしょう。
・43~44小節:今回はフレーズ的に、Dm7と考えるのが良さそうです。シの♮は少し外れたサウンドになっています。(これは理屈的にはドリアンスケールですが。)43小節の3、4拍目はA7が挿入されていると考えることができます。2小節とか同じコードが続く場合、間にセブンス入れるのは、よくやる方法です。
・45~46小節:リディアンセブンスの響きが強いフレーズが出てきました。3、4拍目は13度(ミ)から11度(ド#)、9度(ラ)が良く聞こえ、これはAのメジャートライアドであり、G7のリディアンセブンスの響きを強く感じさせます。
・47小節:ファ#、レの部分はD7と捉えても良いですし、GmM7の様な、クリシエ的なラインと考えても良いと思います。既にお気づきの様に、随所にm7コードの時に、ルートの半音下(Dm7ならド#、Gm7はファ#、Cm7はシなど)の音使いを弾くことが多いですので、どうしても理屈的に理解したい場合は、理論書で裏付けの記述を探してみましょう。
尚、そう言っているそばから、また53と55小節にも出てきますので。
・48小節:シ♭、ソ#、ラはFM7の3度への典型的なアプローチです。
・49~50小節:またでてきました、ラドレミソ。最後のラ、ファ#、ソというのも、もうお決まりですね。
・52小節:ド#にアプローチするのに、レ、ドを挟むのもよく出てきます。そして、Dm7へのアプローチである、シ♭、ソ、ソ#も、既に何度も登場しました。
・53~54小節:このフレーズもそろそろ説明は要らないでしょう。
・55~56小節:9度(レ)からのアルペジオですが、シ♮、レ、が4拍裏のドへのアプローチです。7小節目と本質的に同じです。あとは裏拍でスケール的にソ、ファ、ミ♭です。53小節目からリズム遊びをしています。
・57小節:これも、4拍目のソの後にラのゴーストノートがあると考えて良いでしょう。3、5、6、7の音使いです。
・58小節:3、4拍目はシ♭、ソ、ソ#、ラということで、また出てきました。
・59小節:FM7の音使いと考えるのが素直です。Am7ならファが、Dm7ならシ♭がちょっと際どい音使いになります。FM7なら、ただのメジャースケールですし、表拍にきれいにコードトーンが来ているので自然です。
・60小節:特記事項はありません。
・61~62小節:やはり61から62の前半はあまり細かい音使いより、Fメジャー一発で弾いていると考えて良さそうです。62の3、4拍のD7のミ♭、ファ、ミ♭、レ、ドは典型的な♭9、#9の音使いで、Gm7の3度(シ♭)へ解決するフレーズです。ということで、厳密にはファはミ#の異名同音です。
・63小節:4拍目からのソ、ミ、ファも、もういいでしょう。
・64小節:ソ♭、ラ♭、シ♭は、C7の裏コードのG♭7を感じさせると同時に、65小節1拍目のブルーノートのシ♮へのアプローチになっています。
・65~66小節:重音を用いた、ブルージーなフレーズです。バップのような単音中心のフレーズから、たまにこういったフレーズ出ると、非常に効果的ですね。
・67~68小節:Em7の構成音のソシの重音を中心にリズム遊びのようにして弾いた後、また、68の3、4拍目はド#、シ♭、ソ#です。今回はド#が四分音符になってしまったので、ソは入っていません。
・69小節:こちらももう何度も出てきました。
・71~72小節:また、Cm7からF7を通して、F7一発として、Dメジャートライアドを弾いています。発想としては23、24小節と同じです。毎度弾くとうるさいですが、忘れた頃に弾くと意外性があり効果的ですね。発想としては真似しやすい音使いだと思います。
・73小節:1、3拍目に綺麗にコードトーンが来ています。2拍目からのド、ド#、レにも注目です。その後、4拍裏で、ミ♭に半拍食って着地しています。
・74~75小節:今度はFM7なのか、Am7なのか、Dm7なのか微妙ですが、Am7だと一番コードトーンに一致するため、とりあえず、記載はAm7です。半音したからのアプローチで、ラドミソですので、Am7なら、1、3、5、7。
FM7なら3、5、7、9。Dm7なら5、7、9、11のアルペジオになります。
その後のド#、ミ、レももういいでしょう。
・77~78小節:Ⅱ度セブンス(Ⅱ7)ですので、セオリーとしては♭9(ラ♭)は該当しませんが、理論はあくまで指標です。
・79小節:アルペジオ的なフレーズです。
・80小節:4拍目のミレがナチュラルなので、3拍目はソ#(#5)となり、ホールトーンと考える方が妥当です。4拍目が、レ#、レ♭という音使いになると、一気にオルタードのサウンドになり、3拍目はラ♭(♭13)と考えるべきでしょう。
・81~82小節:80小節は表拍に綺麗にコードトーンが来ています。81小節のソ、ファ、レ、ミ♭のディレイドリゾルブももういいでしょう。
・83~84小節:上にソ、下にシを固定した同じ音形の中で、ミ、ミ♭、レと動かし、ド#にアプローチするときだけ、いつものレ、ドの流れになります。その後はシ♭、ソ、ソ#、ラです。
・85小節:速い音使いのフレーズですが、半音が含まれているだけで、骨子は今まで通りです。3、4拍目はド#、ミ、レです。
・86小節:2、3拍目のソ、ミ、ファもそろそろ良いでしょう。
・87小節:88小節目の1拍表のF7の5度のドへ向けて、シ、レ、ドという流れで、これも今までと同じ流れです。
・88小節:ファ、ミ♭、ド#というのも、89小節1拍表のB♭M7の3度のレに向けたディレイドリゾルブです。
・89小節:また3、5、6、7の音使い。レファソラのあと、おなじみのド、ラ、シ♭からの、B♭m7のレ♭へ向け、スケールアプローチです。
・90小節:ラ♭になっているので、E♭7のリディアンセブンスでは弾いていないです。あえて言うならA♭メジャーと考えるのが単純です。
・91小節:また全く同じフレーズです。
・92小節:ちなみに、ここのコード進行では、毎回ほとんどフレーズ弾いていません。だから、相対的に弾きにくいフレーズを頑張って弾かずに、休符にするというのも、重要なアプローチです。
・93~小節:ブルーノートスケール一発で弾いています。ただ、適当に音を羅列しているわけではなく、拍の表に適切にアプローチしていることに注目しましょう。
いかがでしたか?
前回より少し長くなりましたが、ウィントン・ケリーとの違いをお楽しみ頂けましたか?これはどちらが良いとかどうとか、といった話ではもちろんありません。
ただ、傾向として、ハンプトン・ホーズの方が似た様なフレーズが多く、アプローチやフレーズの組み立てが素直なのではないかと思います。冒頭にも書きましたが、コードの変わり目とフレーズが分かりやすいのではないでしょうか。
こういったフレーズは、小節や拍におけるフレーズの開始と終わりの場所が規則的なため他所から持ってきた他のピアニストのフレーズとも連結しやすく、また、アドリブをコピーした曲以外の曲にも転用しやすいと言えます。
前回の記事に引き続き、今回の記事の内容も慣れないと、ややこしく感じたり、頭が混乱するかもしれません。ただ、ある程度以上、ジャズのアドリブをちゃんと弾きたい場合はこういったアナライズ(分析)と呼ばれるものは、避けて通れないと言えます。そして、そのうち、コピーした時に無意識にこういったことまで考えるようになってきます。
むしろ、ここまでは頭でできることですが、ここから、こうして拾った音を練習して、自分のものとして弾けるようにする訓練の方が、はるかに大変です。
是非、様々な「コピー比べ」をしてみて、自分に合うピアニストを探してみてください。
今回の記事があなたの練習の役に立ちましたら幸いです。
もっとジャズについての情報を知りたい方は是非メルマガ登録をどうぞ!
「ピアノ経験者がジャズピアノを始めたときに、
挫折しないために知っておくべき重要ポイント」
・約37000字に渡り解説した、ジャズピアノをやり始める時に知っておきたいこと。
Comments