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ジャズの曲のエンディングについて解説します(主にピアノ目線)

  • 2024年9月22日
  • 読了時間: 18分

更新日:2024年10月14日


 

  こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。


 イントロに関する記事は書きましたが(記事はコチラ)、エンディングについてはまだでしたので、この度、記事にすることにしました。とはいえ、エンディングというのは、イントロ以上にその場の空気や状況、アレンジに応じて千差万別であり、イントロの時の様に、包括的な説明が難しいのも事実です。


 よってセッションで最低限合わせられるような、ごく一般論的な、最低限の内容になってしまいますが、少しでも参考になれば幸いです。当然、こちらの記述は一例であり、さまざまなエンディングを知るには音源を聞いてみるのが一番です。毎回ここに書いてあるパターンで終わるという固定観念は禁物ですが、この記事を読むことで、エンディング(アウトロ)の大まかなパターンを知ることができるでしょう。


 まずそもそもですが、エンディングというのは、フロント楽器がいる場合にはその人の裁量が大きく、不確定要素の多い通常のセッションでは、ピアニストがエンディングの主導権を握ることはそれほど多くないという印象です。


 一方でライブでは予めメンバー間で終わり方をある程度決めることもありますし、セッションでもピアノトリオで順番が回ってきた時にはピアニストがエンディングを主導する場合もあるでしょう。


 いずれにせよ、一番残念なのが、良い感じで後テーマまで進んでいるのに、エンディングがまとまらず、グダグダになって曲を終えるという事態です。セッションでホストプレーヤーがいる場合は、ホストがそういった事態に陥る前にまとめてくれる場合などもありますが、できることなら、それに頼り過ぎないようにしたいものです。


では早速いくつかのパターンを見ていきましょう。


 

★エンディングパターン1)逆循環


歌モノなどで非常によくあるパターンです。通称「逆循(ぎゃくじゅん)」です。


即ち、曲の最後の

・・・・進行①


として、終わるべきところを、ⅠM7へ行かずにⅢm7へ行って、


楽譜

・・・進行②


とします。


そして、5~8小節の4小節の部分、


|Ⅱm7|Ⅴ7|Ⅲm7|Ⅵ7|

(ニー、ゴー、サン、ロク)

を気が済むまで繰り返します。時にこの逆循環だけで、何分も演奏するような場合もあります。


楽譜


 ちなみに、見方を変えると、

Ⅲm7-Ⅵ7-Ⅱm7

Ⅲm7-Ⅵ7が、

Ⅱm7に対する、

ツーファイブになっています。

(下図の破線)


楽譜


全体としては、以下のような流れです。


楽譜

・・進行③


そして、逆循環を終わらせて、曲も終わります。(終わらせ方も後述します)


 逆循環と呼ぶ理由はその名の通り、

循環の

Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ

を逆にしてⅡから始めているからです。

ちなみにⅠもⅢもトニックで同じようなものですが、Ⅰは終止感が強いので、循環中はⅢにすることが多いと思います。


 この逆循環演奏のポイントは2つあり、

・1つが逆循環に行くのかどうかの判断。

・もう一つは、逆循環を始めた後、どのように終わらせるか。

です。


 まず一つ目のポイントについて説明すると、進行①の2小節目で、ベースラインがⅤ7からセブンスの音を経過して、Ⅲに行こうとする響きがあるか。Fメジャーで言えばV7であるC7から、Ⅲm7のAm7という流れで、ド、シ♭、ラとなります。

 ※シ♭=C7のセブンスの音。ラ=Am7のルート音


進行①

楽譜

↓逆循環へ


楽譜


 そして、もう一つが、単純に曲の最後のGm7-C7(進行①1、2小節)のあたりで、明らかにテーマのメロディと違うアドリブの様なフレーズが始まるかどうか、ということです。始まれば、進行②になって逆循環開始ということです。


進行①

楽譜

↓逆循環へ

楽譜


 更に逆循環が始まった時に、1周先のⅡm7(進行②の5小節目のⅡm7)へ行きたくなるようなサウンドになっているかどうかということです。進行②の3、4小節目のフレーズラインが、マイナーツーファイブワンのようなサウンドになっていると、更に分かりやすいでしょう。

楽譜

 具体的には、マイナーを感じやすい音として、Ⅲm7を♭5(Ⅲm7♭5)したり、Ⅵ7の♭9の音が聞こえると、マイナー感が出て、Ⅱm7に行きたくなります。(FメジャーのキーのAm7やD7で言えばミ♭が聞こえると、Gm7へ行きやすくなる)


 つまり、テーマのメロディを崩しつつ、進行②の2小節目のⅤ7(C7)からファへ解決するような音ではなく、ミ♭に行くようなフレーズが登場するわけです。それが確認されると、逆循環に行くことになり、大抵、演奏者間で、「あ、行くのね」という空気を察知して、逆循環に行くサウンドを作ることになります。もちろん、必ずしもそういう場合だけではありませんが、そういったサウンドの方が、周りに伝わりやすいです。


◆Just Friendsでの例(テーマメロディはシンプル化しています)

楽譜

Franco Ambrosetti、テンポは220位なので、少し速めです。5小節目から、曲を終わらせるのではなく、少しスペースを与えるようなゆったりしたフレーズにして逆循環へ突入。Am7♭5でミ♭が強調されていることに注目です。D7の最後の部分は次のフレーズへのピックアップです。



◆他の、逆循環突入フレーズの例


楽譜

Kenny Barronのブラックバード、テンポは160ちょっと位のミディアムです。譜面だけだと分かりにくいですが、3小節目からD7の2拍裏までがひとまとまりのフレーズです。(ドー、ラ、シ♭、ドー、レ、ミ♭ッ、レ)


 最後のレ、ファは次のフレーズへのピックアップです。3小節目最後のミ♭は、Am7♭5と考えても良いし、D7の♭9の先取りと考えても良いですが、厳密には左手を拾うとちゃんとわかるはずです。まあ、今回は、あまり細かいことはいいので、マイナーに行きそうなサウンドが分かればとりあえず良いでしょう。


 先に書いた、「マイナーを感じやすい音として、Ⅲm7を♭5(Ⅲm7♭5)したり、Ⅵ7の♭9の音が聞こえると、マイナー感が出て、Ⅱm7に行きたくなります。」と言う部分を思い出して頂ければと思います。


 

 二つ目のポイントである、逆循環を始めたのは良いが、「どのように終わらせるのか。」について解説します。逆循環は、その名の通り、循環しているので、終わらせ方が分からないと、始まったのは良いけれども、ずっと循環して終わらせることができない。と言うことが起こります。


 これに対する対応としては、お決まりのフレーズがあるので、それを弾くことが一番だと思います。これは、お決まりのフレーズで良いのでちゃんと弾く方が、下手に自己流で変わったことをやろうとして失敗するより、全然カッコイイからです。


 共演者にも、「終わる」ことが伝わり事故も防げますし、自信を持って弾くことができるので、冒頭に記述した「エンディングがまとまらず、グダグダになって曲を終える」危険を回避できます。


 

 ただし、毎回、全く同じお決まりフレーズを弾いていると、さすがに「他に芸はないのか」と思われる可能性もあります。よって、いくつかストックしておくのと、基本的な考え方を頭に入れておくと良いでしょう。


 まず、その逆循環を終わらせるための基本的な考え方というのは、フレーズのスピード感を下げることが第一です。(お決まりフレーズを聴けば分かると思います)


楽譜


 例えばそれまで音数やテンションの多い複雑な八分音符や十六分音符を中心に弾いていたのを、4分音符中心に、コードトーンなどのシンプルな音にすること。更に、そういった音を同じ様な音形やリズムパターンで2小節ずつ(ⅡⅤとⅢⅥで)2回繰り返すことです。(上の譜面の3段目の所)


 上記に説明した様なシンプルなフレーズを鳴らせば、共演者が何となく「終わるね?」という確認のためにアイコンタクトを取って来たりしますので、その時に「終わります」という意思表示をアイコンタクトすることになります。


 逆循環おしまいフレーズの注意点として、必ず、Ⅴ7の4拍裏(例:最後の段のⅤ7の4拍裏)で解決します。ⅠM7の1拍表ではありません。私の経験不足なだけかもしれませんが、1拍表で終わらせる演奏を聴いたことがありません。


 尚、最後の二小節は一番最初の進行③の図に記載した通り、ブレイクに入りますが、別途説明します。ここではブレイクに行くまでの内容を説明します。



 では、上記の内容を以下の譜例を見て、実際にイメージしてみましょう。

上の全体譜例の下2段に相当する部分です。


 
楽譜

・上記のジャストフレンズの最後です。これは、少し展開が速いですが、それまで速い16分音符や複雑な音使いのフレーズが続いていたところで、シンプルな音と、3小節目のドー、レ、ミ♭ー、ファ、レー。という停滞感を出してくるため、「終わり」が予感できます。※コードはAm7と書いていますが、Am7♭5でもいいです。

 

楽譜

・こちらは上記のケニー・バロンの最後です。これも、逆循環中には相当さまざまなアプローチをして盛り上げますが、最後はシンプルで似た様な音形を続けて、終わりを予感させています。随所に見られる裏入りがスイング感のポイントになります。

 

楽譜

・こちらは超定番フレーズで、逆循環を終わらせたいならこれを弾け。という位のフレーズになります。こちらも、この通りの裏入りを完全再現する必要はありませんが、表拍ばかりなどの単調なリズムにならないようには注意しましょう。Ⅱ-ⅤとⅢ-Ⅵの部分で、同じような(というか同じ)音形とリズムが繰り返されていることに注目です。


 


 そして、最後の2小節(進行③の最後の下線部)はエンディングのブレイク(ブレーク、Break)に入ることになります。ちなみに、ブレイクはリズム隊が音を鳴らすのをやめて、フロント一人になるタイミングのことで、アドリブソロの入りや、アレンジや曲によってはテーマ中に入ることもあるかもしれません。


 で、このエンディングブレイク(正式名称ではなく、私が今ここでそう呼んでいるだけです。)の演奏内容は、この後説明する、終わりを3回繰り返すパターンと共通の部分がありますので、その後に、まとめて説明します。



 

★エンディングパターン2)3回繰り返す


 これは、酒バラ、Beautiful Love、ジョーンズ嬢を筆頭に、How High the Moon、I don’t know what time it was、I remember you、Out of Nowhere、Like someone in Love、I’m Old Fashioned、Embraceable Youなど、曲のラスト4、3小節のコードが2拍ずつ変わっている場合などに演奏されるパターンです。


 サテンドール、枯葉、ブルーボサも4小節になるためコード進行パターンは若干違いますが、3回繰り返すことが多いと思います。一般的なセッションでは演奏機会が低いですが、デクスターのCheese Cakeも3回繰り返していますね。ちょっとアレンジをしたい場合、前者の2拍パターンですと2回目の繰り返し部分を短3度上げたりすることもあるかもしれません。(ただしセッションで、抜き打ちでやっても誰も合わせられません。)

 

 尚、グリーンドルフィンは曲自体が、そもそも、そういうメロディになっています。



 更に番外編として、アナザーユーはセッションでは全音上げてまた戻るという形で繰り返すことが定番となっています。以前どこかで、このエンディングは何かの音源に元ネタがある。という情報に接した記憶があり、個人的にはアレンジの一つに過ぎない(お決まりのようにこのエンディングをやっているものを聴いたことがありません。)と思っています。ただ、セッションでアナザーユーをやる上では覚えておいた方が良いでしょう。


 ついでに少し脱線しますが、エンディングに限らず、例えばI’ll remember Aprilのイントロをクリフォードみたいにやることが多いように、特定の音源のアレンジが暗黙の了解で演奏されるというのは、セッションではよくあることなのかもしれません。


 

・エンディングブレイク

 さて、上記、3回繰り返すパターンでも、逆循環同様に最後の2小節でブレイクになることがあります。もちろん、ならない場合もあり、その時は最後の音でジャーンになったり、カデンツァ行ったりするかもしれません。カデンツァは後述します。


 ということで、先ほどの逆循環と併せて、エンディングのブレイクについて説明します。


 エンディングのブレイクでは最後の2小節、合計8拍あるうち、6拍裏(2小節目の2拍裏)でフレーズを解決させます。そして、7拍目(2小節目3拍目)は4分休符、8拍目にジャーンでフェルマータです。


楽譜

 これを最もシンプルな形で演奏するのが、ベイシーエンディングと呼ばれる以下のエンディングです。カウント・ベイシーがよく使っていたからこのような名称で呼ばれるのだと思います。シンプルですが意外と難しく、しっかりテンポを感じて正確な位置で音を出さないと聞いている方に拍が伝わりません。メトロノームと合わせて、練習するのが良いでしょう。


 特に、スイングフィールが甘いと6拍裏の位置がずれやすく、8拍目のジャーンがバンドで揃わないという悲劇が発生しやすくなります。ボイシングや音はメジャーコードの第一転回形を高めの位置で3回弾いたり、Gm7-C7-FM7をシンプルにした音を使ったり、様々なパターンがあるので、これも色々なパターンを耳コピしておくと良いと思います。


楽譜
ベイシーエンディング(ラスト2小節)

 

 次に無難なエンディングブレイクは、キーの3度の音から徐々に上がっていくものです。これは、譜面を見てもらった方が早いでしょう。ちなみに、これはイントロでも場所の提示がしやすく、無難に使えるフレーズです。イントロについては冒頭のリンクから記事をご覧ください。これは、マイナーキーの曲ではあまり行わない方法だと思います。


楽譜
3度から上がっていく(例 Fメジャー)

 

 他には普通のフレーズを弾く場合です。これは注意点がいくつかあります。そもそもまずフレーズ自体がリズムにはまってしっかりテンポが出ていることは前提になります。それ以外にも、ちゃんと表にコードトーンなどの重要な音が配置されて、コード感が出ていることも重要です。こういう場合に、ブルースのフレーズやバップフレーズで、ちゃんと狙った拍の場所にフレーズを解決させる技術が必要になります。


 また、エンディングブレイクでフレーズを弾く場合は、ブレイク開始早々にフレーズが始まることが多いでしょう。2拍休符を入れてから弾き始めると、フレーズが思いつかずに弾けなかった感が出てしまうことがあります。


楽譜
普通にフレーズを弾く場合

 

 ここまで述べてきたパターンとは異なるもので、和音を半音ずつ移動させていくパターンもあります。半音なので、細かいコードの種類(m7とか、7とか、dim7)は多少異なっていても大きな問題にはなりません。


 この場合、半音ずつずらす最初の音がⅤ7になると思いますが、Ⅴ7の時にキーの1度を鳴らす場合はsus4にしましょう。(例:Fメジャーにおいて、ファを弾きたい場合は、C7のファはアヴォイドになりますので、C7sus4にしましょう。)


楽譜
コードで降りていくパターン(例 Fメジャー)

 

★エンディングパターン3)カデンツァ


 カデンツァは曲の最後にソリスト一人で、派手なことをして、それが終わったらみんなでジャーンとやって終わる、あのエンディングです。辞書的な用語の説明はともかく、通常カデンツァと言うと、クラシック音楽の協奏曲において、ソリストが技巧的なパートを弾く演奏を指すことが多いように思います。ジャズでも、長さが決まっていない、テンポフリーでソリストが演奏する曲の最後をカデンツァと言うようです。


 バラードにおいては高確率でカデンツァが演奏されます。また、ミディアムテンポの場合でも、エンディングに差し掛かる前にリタルダンド(徐々にテンポをゆっくりにする)と、カデンツァに突入する雰囲気が形成されます。従って、フロントがいる場合は、フロントが求めていないのに、勝手にテンポを落として、フロントがカデンツァを弾く状況を作ることは望ましくないでしょう。また、ピアノトリオなどで演奏している場合、自分がカデンツァを弾く準備が出来ていないのにテンポを落とすと墓穴を掘ることになります。


 それではもう少し具体的に、ソリスト(フロント)の伴奏をしている場合と、自分で演奏する場合に分けてポイントを説明します。


 まず、伴奏をしている場合においては、前述の通り、ソリストは一人ですので、基本的にやることはありません。聞いて待っていましょう。ちなみに、カデンツァに入るタイミングですが、曲の解決直前のⅤ7が基本です。このコードを鳴らした後、ソリスト以外のメンバーは演奏を止めます。


 そして、ソリストのカデンツァが終わる時に、ソリストは「これで終わりです」というフレーズと、フレーズの最後の音を伸ばします。場合によってはアイコンタクトをしてくる場合があるかもしれません。このフレーズの最後の音が鳴ったら、ピアノはエンディングのコードを付けることを求められます。(ギターがいる場合は、この限りでないこともありますが。)

 

 とはいえ、まずは難しいことは考えず、とりあえず、曲のⅠ度のコードをジャーンと弾けば大丈夫です。(※フロントとのコミュニケーションによっては、フロントがピアノに渡してきて、一度、ピアノがまた少しコード進行を付けて、再度解決させるといったこともありますが、高度なので、通常のセッションではあまり考えなくていいと思います。)


 そうすると、ドラムやベースも入ってきて、みんなでワイワイやって、曲を終えることになります。このワイワイやっている時も、フロントが終わりの合図やキューを出すこともありますので、周りの空気に気を配りましょう。


 この時、あまりカッコつけて奇抜なコードやテンションを弾かない方が良いでしょう。特に、ギターがいる場合にお互いがあまり勝手なことをすると、音がぶつかる可能性があります。とはいっても、さすがに、Cメジャーでドミソはないですので、適宜、ミラレの様に4度系で組み立てるとか、9th位のテンションを入れるとか、多少は工夫しましょう。


 尚、ソリストがカデンツァ終わりの最後の音を伸ばしている時にピアノがコードを弾かないと、みんなでワイワイする段階に移行することができず、最後の音を伸ばしている管楽器奏者は呼吸困難になり、ついには息が切れて、後で恨まれることになるので注意が必要です。循環呼吸をして、いつまでも音を伸ばして観客が盛り上がっている状況には、今の所、遭遇したことはありません。


 次に自分がこのカデンツァを弾く場合ですが、実は、ここまで述べてきた内容から分かるように、基本的にピアノトリオでバラードをやる時以外、できなくてもどうにかなります。このように偉そうに解説している私も、カデンツァはまともに弾けません。

 

 ただし、ピアノトリオでバラードをいつまでも避け続けるわけにも行かないので、この時の簡単なポイントだけはお伝えします。それは、曲の#4度から半音ずつ降りるコード進行に基づいたサウンドを弾くことです。


 どういうことかと言うと、#4度をルートとするm7♭5コードの♭5の音(バラードに多いE♭メジャーならば、Am7♭5のミ♭)が、原則曲の最後の音になりますので、曲のⅠメジャーに着地したいところをAm7♭5にして、そこから、このコード進行に沿って弾いて行けばいいということです。


楽譜
バラードエンディングのコード進行の例

 これであれば、あまり技巧的に派手なことや、クラシックピアノの訓練をたくさん求められる様な音数を弾かずとも、シンプルなフレージングで十分エンディングが成立します。


 上記以外のカデンツァや、ミディアムテンポでもあえてリタルダンドさせてカデンツァを弾きたい猛者は、是非様々なピアニストのカデンツァを耳コピしたり、クラシックの楽曲を一部拝借するなどして、カデンツァに挑戦してみてください。


 

★エンディングパターン4)お決まりのイントロを繰り返すなど

 All the things you areやConfirmation、先述のI’ll remember Aprilなど、割とお決まりのイントロがある場合、このイントロと同じことをエンディングに繰り返す場合があります。特にAll the things you areは多い気がします。


 余談ですが、このAll the things you areの定番イントロはカウント無しでいきなり鳴り出すと、個人的にはどう頑張っても2、4拍が逆転して聞こえるため、最後に意識的に1拍少なく感じて頭を揃えないと正しく入れません。


 偉大なイントロ?にイチャモンを付けるのは実に恐れ多いですが、分かりやすく、入りやすいという意味では、決して手放しで賛同できるイントロではないと思っています。テーマのメロディの雰囲気にも合っているとは思えません。エンディングで使われる場合については、曲の流れのまま入っていきますので、正しく感じることができます。


 あとは、Boliviaとかも、場合によっては、同じことを繰り返してフェードアウトみたいな終わらせ方もあるように思います。他には、Nica’s Dreamはそもそも、エンディングまで含めてアレンジのような感じかもしれません。


 いずれにせよ、このエンディングはある程度暗黙の了解みたいな所や、認知度が高いということで、誰かが始めれば勢いでみんな乗ってくるという場合もあると思います。セッションにおいては、そういった場合の流れというのも大事にしましょう。


 あと、先ほど3回繰り返しの所で述べたチーズケーキですが、この曲もイントロのベースのフレーズをエンディングの時に繰り返してフェードアウトできたりもします。


 

★エンディングパターン5)ビバップ


 最後にビバップの曲ですが、多くの場合、エンディングはメロディを繰り返したり、あまり色々なことを付け加えたりせずあっさり終わる傾向にあります。(もちろん、そうでない場合も多々あります。そもそも前述したConfirmationがそうですね。)


 最後の音をそのままジャーンと伸ばしたり、スパッと切って終わったり、といったところでしょうか。特に、テンポが速い曲においては、メロディの最後の音でみんなが揃ってピタッと終わることが多いです。Donna Leeなどは典型的でイメージしやすいのではないでしょうか。


 自分は切るつもりでジャーンとなる場合は、後から付け加えればどうにでもなりますが、ピタッと終わることが多い曲で、他の人がピタッと終わっているのに、一人止まり損ねると、ちょっと浮きますので注意しましょう笑。


 

・番外編、ベースのソロ明け

 曲のエンディングとは関係ありませんが、一つの記事を立てるほどの話ではなく、コラムとして追加できる話ですので、ついでに書いておきます。


 普通にアドリブを回している時、ベーシストのアドリブの終わりにおいては、多くのベーシストは、2小節位前からまたウォーキングベースに戻ります。そうしたら、次は4バースに行くなり、テーマに戻るなり、ベースのソロはおしまいというわけです。


 しかし、以前、初心者の人とセッションに行った時に、そのことを知らなかったようで、2曲連続でベーシストのウォーキングをスルーしてしまいました。終わろうと思ってもソロを終えられなかったベーシストは、少し面食らっていました。


 その初心者の人に、上記のことを伝えたところ、次からはちゃんとベースソロの後を引き継ぎましたので、知っているか知らないかだけの問題と言って良いでしょう。もし初耳だという場合は、是非、頭に入れておきましょう。


 

以上、まとめます。


 エンディングは状況に応じて千差万別であり、様々なパターンを聴くには音源を色々と聞くしかありません。(基本的なことを書くだけでもこれだけの量を要しましたので、細かく網羅することは困難です。その一例を挙げると、最後の和音を半音上げる等。)


 ただし、セッションにおいては、ある程度暗黙の了解のように決まっている部分がありますので、何となく知っているだけでも、ついていきやすくなるはずです。


今回、エンディングのパターンは、逆循環、3回繰り返す、カデンツァ、イントロを繰り返す、ビバップに分けました。

最後にコラムとして、ベーシストのソロ明けについても補足しています。


今回の記事があなたの役に立てば幸いです。


 

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