続 ジャズスタンダード「チェロキー」は簡単だ?!メジャーツーファイブワン・ボイスリーディングについて
- 2024年5月2日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年8月20日
過激なタイトルのためか、人気記事となっております前作の続編を執筆いたしました。まだお読みでない方は、是非上記のリンクからご確認下さい。
さて、前作は「チェロキーを用いることでスプレッドを効果的に練習できる」という趣旨でした。しかし、やはりシャープだらけのキーで実用性が低く、具体的な練習方法も記載しておりませんでした。
また、ツーファイブワン進行はネットで検索すればたくさんヒットするとはいえ、私なりの説明も加えておくべきだろうと考え、その辺りを続編にて補足していきたいと思います。この記事を読むことで、前回の記事から更に、具体的な練習方法や、背景理論などの理解を深められるでしょう。
とはいえ、やはり、理論と実践は各個人の感性でバランスが難しいため、私の言葉足らずで難しく感じたり、逆に物足りなく感じる方がいらっしゃった場合、どうかご容赦頂ければ幸いです。
ではさっそく見ていきましょう。
・ジャズ理論その1:メジャーツーファイブワン
ツーファイブワンはメジャーとマイナーがありますが、マイナーはメジャーよりも考え方がややこしく、今回のチェロキーではメジャーツーファイブの連続のため、ひとまずマイナーについては取り扱いません。
まず基礎的なことですが、音楽にはキーというものがあり、♭も#もつかないCメジャー(ハ長調、ドレミファソラシ)から、♭が1つずつ増えるごとに、F(1個)、B♭(2個)、E♭(3個)というように、5度ずつキーが変わっていきます。簡単に言えば、これがサークルオブ5thです。♭の付く順番は、シ、ミ、ラ、レ、ソと、これまた5度ずつずれていくと決まっており、6個付いてG♭メジャーになると、#6個のF#メジャーと異名同音になります。ただし、ジャズでは♭がメインであり、#は出現頻度が大きく下がりますので、ここではその話は省略します。【図.1】

ちなみにクラシックは#の方向で回っていくのが一般的で、ショパンの前奏曲集はその順番で長調短調合わせて24曲によって構成されています。その7番が太田胃散のあの曲で、15番が有名な「雨だれ」です。7番が#3つのAメジャー(イ長調)、15番が♭5個のD♭メジャー(変ニ長調)です。
閑話休題。各メジャーキーのスケールから、それぞれスケールの音だけを使って4音のコードを作っていくと、4音ダイアトニックコードが7個出来上がっていきます。ツーファイブワンというのは、このダイアトニックコードの2番目、5番目、1番目を順番にならべたコード進行だとご理解下さい。【図.2】

ちなみに、学習初期の頃は、コードの覚え方として、メジャーセブンス(M7)の3度と7度の音を半音ずつ下げてマイナーセブンスm7と考える。(例えばCM7のミとシをそれぞれ♭にすると、Cm7コードになる)というアプローチも可能です。(あと、初心者がCメジャー7とC7で混乱するのはよくある話です。)
このように、Cを基準に色々な種類のコードCM7、Cm7、C7、Cm7♭5などを覚えていくのも、有効な手段である一方、例えば、同じCm7でも、ダイアトニックコードで考えると、B♭メジャーキーでは2番目、E♭メジャーキーでは6番目、A♭メジャーキーでは3番目です。こういった、「どのメジャーキーの何番目なのか」という観点で捉えることも重要です。
と書いたものの、最初はそんな余裕はない可能性が高いですし、逆に実際に慣れてくると、この辺りのことが同時に直感的に頭に浮かぶようになってきます。よって、あまり焦らずに、徐々に慣れていけば良いでしょう。
車の運転でも、スポーツでも料理でも何事もそうだと思いますが、最初はぎこちなかったものが、何度もやっているうちに、気づくと自然にできるようになっているということがあります。コードの理解もそれに近いものがあると考えています。
ここまでの話を踏まえて、改めてチェロキーを一般的なB♭メジャーで演奏した場合を考えます。すると、サビのツーファイブワンはBメジャー、Aメジャー、Gメジャーというキーへの転調が発生します。いずれのキーも、Cメジャー、Fメジャー、B♭メジャーなどの♭キーに比べて、ジャズでの出現頻度はかなり低くなります。(Gメジャーはその中では多い方ですが。)【図.3】
(図.3)

よって、今回はチェロキーのキーをD♭メジャーに移調して考えます。すると、サビのキーはD、C、B♭メジャーに転調することになります。そこから、Cメジャーのツーファイブワン部分をピックアップして更に説明を進めていきます。【図.4】
(図.4)

音源はこちら
尚、上記からも分かる通り、サビの転調は全音ずつキーが下がっていくツーファイブワンが連続するという性質上、ジャズで頻出する、C、F、B♭メジャーを同一キーのサビに収めることができません。すなわち、C、B♭のツーファイブワンはD♭メジャーで、FのツーファイブワンはEメジャーで出てくることになります。
※譜面だけ下部に乗せておきますので、更に知りたい方は是非ご参照下さい。
(参考譜面)

音源はこちら
・ジャズ理論2:ボイスリーディング
それではさらに、ツーファイブワンのコード進行についてCメジャーで考えて行きましょう。ここで、ボイスリーディングという注意点に注目します。
どういうことかと言うと、4音を並べたダイアトニックコードをその4音の塊のまま平行移動させても、綺麗な響きは得られないということです。ドミソシ、レファラド、ソシレファ。みたいな感じは望ましくない。ということです。
ではどうするべきかと言うと、進行する前後の両方のコードに共通する音を残し、ボイシングの中で変化する音を少なくするのです。そうすることで良いサウンドが得られます。これをボイスリーディングと言います。
スプレッドボイシングは、このボイスリーディングを考慮したボイシングとなっており、一般的にタイプABの二つがあります。ただ、タイプAとかBは特に覚えることでもありません。
問題は下図の通り、綺麗なボイスリーディングを意識することです。個人的に、タイプBと呼ばれるボイシングが好きなため、譜面含めて、そちらを例示しました。【図.5】
(図.5)

以下にポイントを記載します。
・両手内側の指でガイドトーンを弾く(四角枠)
・内声、トップは動きはスムーズにつなぐ(→)※数字は度数
タイプB 上声: 9→(13→♭13)→9 内声:5→(9→♭9)→5
セブンス(G7)の2番目の音、♭9、♭13はオルタードの響きを経由
・ジャズはドラムとの4バースなど、4小節でひとまとまりで考えることが多く、
この小節感覚を習得するのが重要。このボイシングも4小節一塊が
意識しやすいように、最後のメジャーコードをメジャーセブンスから6thに
変化させている。(破線の→)
1番目に書かれたガイドトーンと呼ばれるコードの3度と7度の音は、これだけでコード音の特徴を表す音です。一般的に、ベースにルート音を任せ、このガイドトーンを左手で抑えてシンプルにすることで、右手のアドリブフレーズに集中できると言われています。
・ジャズ理論3:オルタード
Ⅴのセブンスコード(G7)の所で、半音回り道をして、ⅠのCメジャーセブンスに解決している音があります。ラ♭とミ♭はそれぞれ、♭9と♭13でオルタードの特性を持つ音です。(ちなみに9がラ、13がミ)。
話が少し脱線しますが、このオルタードは、解決先がメジャーセブンスでも、マイナーセブンスでもよくサウンドし、また、非常に「ジャズっぽい」響きを持っています。是非、自分の耳で確かめてみて下さい。
また、オルタードやセブンスコードについて更に詳しく知りたい方は、是非、こちらの記事も併せてご参照ください。
・最後に練習方法
以上、簡単にチェロキーにおけるスプレッドボイシングの理論的なポイントを説明してきましたが、いかがでしたか?
最後に練習方法を一つ提案しておきたいと思います。
① まずは以下のD♭または、Eメジャーの譜面から、C、F、B♭メジャーなどの頻出するキーの好きなツーファイブワンを一つ選び、4小節じっくり覚える。
② メトロノームやアプリ「i Real Pro」などと併せて、1週間をめどに飽きるまで繰り返し練習する。
③ これを色々なキーで繰り返す。
もし、①の時点で余裕があるならば、1つのキー(4小節)に絞らなくても問題ありません。ただ、多いよりは少な目の方が良いです。多すぎると覚えきれなくなります。
ポイントは、欲張らずに、着実にこなしていく。ということです。
このように、ジャズはボイシング、アドリブ、理論の勉強、音源の耳コピなど、様々な角度から練習を行う必要がある上に、練習も非常に地道で、短期間では進歩や達成感を感じにくいものが多いです。併せて、特に初めのうちは自力で音楽らしい音楽を奏でることも難しく感じることが多いです。
そういった時は、気分転換にアレンジ楽譜やコピー譜面やこれまで弾いてきたレパートリーで気分転換するのも有効な方法だと思います。
ただし、やっていくうちに雪だるま式にできることが増え、楽しくなっていくタイミングがあるはずですので、是非長く続けることを第一にピアノを楽しんでいきましょう。
この記事があなたの練習の役に立てば幸いです。
尚、前回の記事には、一般的なチェロキーの演奏キーであるB♭の譜例を記載しています。更に、メルマガ登録でプレゼントしているものには、12のメジャーキー全てがカバーできるよう、B♭、D♭、E、Gメジャーの譜例とタイプAB両方のボイシング、およびその打ち込み音源を含めてあります。是非、更なる練習材料が必要な場合は以下よりメルマガ登録してご活用下さい。
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