【姉妹記事2号】~管理人の昔のヘナチョコ演奏大公開~ ジャズピアノは大きく分けて3種類存在する!?
- 2024年7月20日
- 読了時間: 19分
こんにちは、ジャズピアノ研究室管理人の田中です。
今回の記事は姉妹記事「初めのうちはジャズの良い演奏を見極めるのが難しいという話です」と併せてお読み頂くと、初心者の方のジャズへの理解がより深まると考えております。もしよろしければ、そちらも併せてお読みください。リンクは記事下部に付けています。
さて一方、今回の記事では、そもそも広く世の中では大きく分けて3種類のジャズピアノが存在するのではないか。ということについて解説していきます。
今回の記事を読むことで、その3種類のジャズピアノを見極められるようになり、Google検索などにミスリードされることを未然に防ぐことができるようになるでしょう。
早速ですが、その3種類とは、
・楽譜ジャズ
・アレンジジャズ
・いわゆるジャズ
です。
これらの3種類は演奏にあたり求められるものがそれぞれ異なると考えています。しかし一方で私が最近感じているのが、ジャズピアノについて検索をかけた場合、これらの3つのジャズピアノが区別されず、一緒くたになって表示されるということです。
その結果、特に初心者や興味を持ち始めたばかりの人は内容の見極めができず、自分がやりたいジャズの情報に行きつくことが難しくなっている可能性が高いのではないか。ということです。
もちろん、分類というのはどこで線を引くかが難しい問題で、リストとブラームスが同じロマン派なことから分かるように、必ずしもいい落としどころが存在するわけではありません。また、バリー・ハリスはモードジャズを認めていなかったようです。
要は、この3種類というのは、この記事における便宜的な区切り方だということを予めご了承下さい。そして、いつもながらおことわりしますが、いずれのスタイルの優劣、良否を述べるものではありません。
ではそれぞれのジャズはどういったジャズなのでしょうか?
まず楽譜ジャズです。
これは、楽譜に書かれたものを弾くジャズです。ここではジャズはアドリブとか、楽譜に表せない。というのは一旦忘れて下さい。この楽譜ジャズが存在する証拠に、検索では、「ジャズピアノ 楽譜 無料」「ジャズピアノ 楽譜 初級(あるいは中級)」などの楽譜を求めるワードが検索されています。
また、楽譜ショップに行けば「○○ジャズアレンジ 上級編」のような楽譜が山のように売っています。以上の様に、他人が準備した既存の楽譜を弾くカテゴリーと言えるでしょう。(ただし後述の「いわゆるジャズ」習得のための練習曲は主旨が異なります。)
選曲は、一般的に有名なポップミュージックやディズニー、ジブリ。あるいはジャズのスタンダードの中でも一般に有名なもの、Aトレ、王子様、my favorite things、ムーンリバー、星に願いを、テイクファイブ、スペインなどでしょう。いわゆるセッションでよくやるスタンダードと少し傾向が違うのも特徴です。
さらに、広義にはジャズミュージシャンのコピー譜もここに分類していいと考えます。
このタイプですが、既にお分かりの通り、ピアノ一台で弾くスタイルとなります。あるいは連弾やピアノデュオの場合もあるかもしれませんが、例外的だと思います。
動画配信サイトにおいても、ジャズアレンジといって、譜面台に盛大な大譜表を広げて演奏されているものを見かけます。
メリットとしては、クラシックや楽譜での演奏を経験した人であれば、気軽にジャズで使用されるようなテンションの効いたコードやブルーノートなどを楽しむことができることです。
次はアレンジジャズについて説明します。
これは、アドリブソロのフレーズや、事前の仕込みをどの程度含めるかは場合によって違いはあると思いますが、基本的には、「楽譜ジャズ」にあるような、大譜表の音符を再現する形は採りません。言い換えればリードシート演奏と言えるかもしれません。
メロディに対して自分でコードをハーモナイズ(和音付け)し、そのコードにジャズで頻出するテンションを使用したアレンジを施す。などのアプローチです。
楽譜ジャズと同様、基本的に、ピアノ一台で弾くことが想定されています。
メリットとしては、「楽譜を用意せずに弾ける」ことでしょう。大譜表の読譜は正直、非常に負担が大きい作業です。
どれだけ楽器を高度にコントロールする技術を習得していても、リードシートで演奏できるかどうか、というのは別問題ですので、1番目の「楽譜ジャズ」」とはある意味で一線を画しています。選曲としては、「楽譜ジャズ」と傾向が似ていると考えており、ポップスや有名曲が人気だと思います。 あるいは、スタンダード曲集を眺めて、Over the Rainbowやtheクリスマスソング、星に願いを、When I fall in Love。といった曲から手を付ける場合もあるかもしれません。
私が推察するに、世間的に最も市民権を得ていて、人気や演奏効果があり、憧れる人が多い演奏スタイルがこれです。また、私の経験上や動画投稿サイトなどを見る限り、ジャズ未経験者がいざ自分がジャズを弾きたいと思った時、(明確に後述の「いわゆるジャズ」に憧れている場合を除き)このアレンジジャズを想定する人が多数派だと考えられます。
しかし、それによって落とし穴もあります。それは何かというと、譜面もなく、「いわゆるジャズ」の様に音源もない状態、すなわち具体的な目標やお手本が無い状態だと、左手が和音(コード)を弾き、右手がメロディ。という発想になりやすいことです。
しかし、それだと遅かれ早かれ行き詰まるのです。コード初心者がコードを勉強するとき、通常、コードトーンを勉強し、それを覚え、弾けるようになろうとします。その上に、右手でメロディを弾きます。ところが、4声のコードはヘ音記号音域でベタっと鳴らしても綺麗に響きません。ボイスリーディングが上手くいかないし、ローインターバルリミットに近い領域で音を固めると音が重くなるからです。
これに対する主な対処法は、右手と左手の共同作業で広い音域、あるいはト音記号音域を利用して、両手で一つのボイシングを作ることです。
ところがこの時、コードトーンは教科書通りの1つ飛ばし(ドミソシ等)の並び順にはならず、左右でバランス良く音を配置するので、コードトーンを思い出しながら弾くような段階ではとても手に負えません。初心者の混乱を招きます。
次に、左右の手でボイシングを作ったら、メロディはどこで弾くのでしょうか?ボイシングを抑えていない余った右手の指です。しかし、大抵はコードに慣れない初心者がそこまで考える余裕はありません。
また、上記の様なボイシングを弾きやすい曲とそうでもない曲も存在します。ある初心者の人の弾きたい曲が、綺麗なボイシングを作りにくい曲だったとしましょう。すると、より一層、左手和音、右手メロディの発想から脱却するのを困難にします。
結果、想像していたオシャレなジャズにならず、演奏や練習がつまらなくなり、やめてしまいます。
何を言いたいかと言うと、コードが書いてあるからと言って、コードトーンを覚えただけでは、満足のいくリードシート奏法はできるようにならないということです。ここを脱却するのに、それなりの鍛錬期間が必要です。これが、初心者が挫折する大きな要因の一つでしょう。
私としては、後述の「いわゆるジャズ」含めて豊かなジャズピアノらしい響きを得られ、汎用性が比較的高いボイシングとして、手始めにスプレッドから親しむのが、一番良い落としどころだと考えています。
※下部に、少し切り口が違う解説をした記事のリンクを付けておきます。
アレンジジャズの話が長くなりましたが、最後に「いわゆる」ジャズです。
これはバド・パウエル(でも誰でも良いですが)のような、著名なジャズジャイアントが弾くような、アンサンブルでのアドリブを中心としたスタイルのジャズです。世間的にはマニアの音楽、アドリブが主体でつかみどころがなく、喫茶店や居酒屋やバーのBGMでしかありません。会社の飲み会でBGMを聴いて「これはアダレイとエヴァンスがやっているワルツフォーデビーですね」などと言おうものならば、ただの変人です。
また私がジャズピアノソロは難しい。とよく述べていますが、ここでいうソロ演奏は、「いわゆるジャズ」に含まれたスタイルを指しています。
左手で最低限のベースを弾き、右手でシンプルな音使いでも(ちゃんとビートを出しながら)スタンダードのテーマ等をソロで弾く方法は、基本的に「いわゆるジャズ」の発想です。よって、少なくとも現時点で「アレンジジャズ」をやりたいと考える人に、基礎としてこういう練習を勧めると「つまらない、思っていたのと違う」となりやすいことに注意が必要です。
それはともかく、全体としてソロやトリオ、カルテットなどの演奏編成や形態は限定せず、ジャズジャイアントの演奏スタイルをお手本にしたスタイルと考えています。
演奏される主な曲は、昔の映画音楽や歌モノを扱った、いわゆるジャズスタンダードや、バップ以降のミュージシャンが作曲したバップチューンやオリジナル曲(パーカー、ガレスピー、ベニーゴルソン、ショーター、マイルス、ハービーなど)でしょう。
以上、3つのジャズピアノを説明しました。
読んでお分かり頂けた通り、それぞれのジャズピアノは求められるものが異なります。そのため、表示される検索結果がこの3つをあいまいに包含していると、自分が求めているものと違う情報に行きつく危険があるのです。
例えば、
・「いわゆるジャズ」をやりたいと思っているのに、音源を聞かずに(耳コピせずに)ひたすらアレンジ重視の理論を勉強している。
・「アレンジジャズ」をやりたい、アドリブフレーズをバリバリ弾きたいわけではないのに、好きでもないモダンジャズを聴いて「いわゆるジャズ」の練習をしている。
・クラシック出身者で、アドリブをやりたいと思っているのに、なかなか上達せず、気づくとついつい「楽譜ジャズ」の数をこなしているだけになっている。いつまでもアドリブができるようにならない。
等です。
このことから、ジャズについて検索する場合、自分は何を求めているのか、意識して情報の中身を確認する必要があるということです。確実な見分け方があるわけではありませんが、それぞれスタイルがどのような演奏や、楽曲解説をする傾向にあるか、ポイントを以下に記載しておきます。
・楽譜ジャズの特徴としては以下のような内容です。
「ジャズアレンジ」「ジャズ風」「初級、中級、上級」といった言葉が付いていることが多いです。級が上がるほど頻繁に(15連符のような)カデンツァ風のアルペジオみたいな(無駄な?)音使いが登場します。見本演奏の八分音符は見事なまでに2対1の跳ねたリズムしか出てきません。また、市販の楽譜をそのまま弾いて紹介している動画投稿などはここに入ってくると考えています。
・アレンジジャズでは、自らがアレンジした曲を演奏したり解説し、動画や画面に楽譜の表示を伴う場合もあるので、一見、楽譜ジャズと似ている部分もあります。
演奏している楽譜が既存のものかどうかがポイントになるでしょう。また、楽譜やアレンジについて理論的な説明があったり、アレンジの参考にしているジャズピアニストの紹介がされている時はこちらに含まれると言えます。
自らアレンジをする人でも、八分音符が見事に2対1ばかりとか、4ビート、スイングのリズムは弾かないといった特徴が見られる場合などは、「いわゆるジャズ」の理論や雰囲気を利用していると考えられます。
・「いわゆるジャズ」では、基本的な演奏や説明内容が、ジャズジャイアントの演奏に基づく内容かどうか。というのが一つの判断基準です。
もちろん、基礎的な理論などでは教科書的な説明がされる場合もあります。しかし、そのサイトやページを通して、モダンジャズなどの音源をコピーしている気配が感じられない場合はどんなに上手いと感じても、実は「アレンジジャズ」の可能性が高いです。
ここからは、当サイトのメインコンテンツである「いわゆるジャズ」に特に注目して話を進めます。(とはいえ、是非、楽譜が弾きたい人やアレンジがやりたい人も、せっかくなので一通り最後まで読んで頂ければと思います。)
世の中の傾向として、「いわゆるジャズ」を弾く人は、「ジャズ」といえば、自分たちのやる音楽こそがジャズであるという一種のプライドが強い傾向は否定できないと思います。また、ジャズ未経験者が「ジャズをやりたい。ジャズに興味を持っている」と言っているのを知ると、それの意味するところが「いわゆるジャズ」をやりたい、だと考えがちではないでしょうか。
ここからは、上記の様な「いわゆるジャズ」群のこだわりの理由を深堀して「いわゆるジャズ」の魅力を探っていきましょう。
まず、以下の内容だけでは一般化は難しいかもしれませんが、いわゆるジャズの人の一種のプライドを垣間見られる話です。
以前、私の知り合いの「いわゆるジャズ」好きの人が、ソロピアノの難しさに悩み、「普通の聴衆からすると、ジャズアレンジ楽譜を弾いているアドリブできない人の演奏の方が、自分よりも余程ジャズピアノをちゃんと弾いているように聞こえるのが、何とも複雑な気持ちです。」という主旨のことを言っていました。
私もその気持ちもよく分かりますが、ある意味、これが楽譜の最大の強みです。普通の聴衆にとって、アドリブかどうかなどは基本的に、関係がありません。
クラシックピアノの演奏者がメインの社会人ピアノサークルに行くとよく分かりますが、正統派なクラシック曲ではなく、アレンジされた「楽譜ジャズ」を弾いていれば、ジャズが弾ける人としての称号は獲得可能です。私たちのような人からすると、「実はそうじゃないのだけれど。」と言いたくなる気持ちもあるのですけどね。
だからといって、「じゃあ、楽譜を弾けば良いじゃないか?」という指摘は、「いわゆるジャズ」をやっていない人の意見です。そういう状態でもあくまでジャズが好きなのがジャズオタクなのです。ただマニアというのはどこでもそのようなものだと言う気もします。
ジャズに限らず、ピアノ演奏スタイルや情報の多様化に伴い、どうしても「ジャズの定義」などの議論が生まれてしまう部分はあります。ジャズが好きな一人として、「いわゆるジャズ」好きのこだわりも理解できますし、そのこだわりが、「いわゆるジャズ」を馴染みにくいものにしていることは否めないかもしれません。
でも、そこまでのこだわりは何によって生み出されてくるのでしょうか?
もちろん、様々な要素があり、人によっても好みがあるとは思います。まずは私個人の聴く側として感じる魅力を述べます。それはアドリブで聴ける“期待通り”と“予想外”の演奏の絶妙なバランスが、スイングという独特のフィールを伴って楽しめることです。しかもそれがエンドレスに続くのです。
よく分からないと思うので、もう少し説明します。
どんな音楽でも2度とは同じものを聴けませんし、録音されたものであれば物理的には、何度も同じことを聴くことは可能でしょう。ただ、そういうことではなく、「いわゆるジャズ」の場合、演奏が例え録音されたアドリブでも、プレーヤーの特徴的な音使い、フレーズ、スイング感やフィールがあり、それを求めて音楽を聴くのです。
だから、それぞれ人によって好きなプレーヤーとそうでもないプレーヤーが出てくるのだと考えています。特に、スイング感はジャズ独特のリズムであり、好きなプレーヤーのスイング感はその人からしか聞くことができません。ここが、既述した“期待通り”の方です。
一方で、同じ人の同じ曲でもテイクによって異なるアドリブ、時期によって同じ曲とは思えないほど解釈が変わったりします。また、同じ曲であっても、演奏者によって演奏が変わる度合いが他の音楽と比べて著しいのが「いわゆるジャズ」です。これらが予想外の方です。
この予想外は、(言い方悪いですが)期待外れや好みからの乖離と紙一重の部分もありますが、未知の名演奏から、将来の「期待通り」を発掘する探求心が途切れることがありません。
毎度期待通りすぎると一歩間違えると予想可能と飽きに繋がってしまい、予想外がいつも期待外れだと、将来の「期待通り」候補を新規開拓できません。ところが、「いわゆるジャズ」はこのバランスが本当に絶妙で、数珠繋ぎに聴いたことがない演奏が気になってきてしまうのです。
「いわゆるジャズ」では、プレーヤーはリーダー名義でなくても、サイドメンバーなどで参加していることもあり、参加作品を追いかけたくても、それを調査するだけでも大変な手間になります。だから、ジャズにはまり始めると、キリがなくなってマニア化するのです。
簡単に例示すると、ジャズ初心者におススメとよく言われるピアニスト、ウィントンケリーは自身のリーダー作以外にも、マイルスバンドなどの数々のバンドのサイドピアニストとして作品に参加しています。その中ひとつ、トランペット奏者のブルー・ミッチェルの「ブルースムーズ」に参加しており、当サイト一押しのI’ll close my eyes他で名演を聞かせてくれます。
さて、そのブルー・ミッチェルですが、ホレス・シルバーがリーダーのグループに参加しています。
ホレス・シルバーはリーダー作だけでなくジャズメッセンジャーズのピアニストとしても知られていますが、このグループはモーニンで名高いドラマー、アート・ブレイキーのバンドです。
で、ブレイキーはバド・パウエルと一緒にやっている録音があります。
バドの名盤ジャズジャイアントはベースにレイブラウンが参加していますが、レイブラウンはピーターソントリオで非常に有名ですね。ピーターソントリオのベーシストとしては他にサム・ジョーンズとペデルセンが特に有名ですが(他にはジョージ・ムラーツ、デイブ・ヤングとかですかね)、サム・ジョーンズは上記のブルースムーズのベースを担当しています!ペデルセンも若いころにバドと共演しています。
以上のような状況が無限に入り組んでいるのが「いわゆるジャズ」の世界です。
尚、これらの演奏は大抵何十年も昔のものですが、現代に至るまで忘れられずに聞かれ続けています。(聴いている人は相対的に少ないかもしれませんが。)一過性の流行りではこうはいきません。
それから、上記は聞く側の話でしたが、演奏の面から考えても、ジャズのリズムや4ビート、八分音符、アドリブ、他楽器とのアンサンブルというスキルは、それに取り組まないと、なかなか上達することが難しいです。そういった難しい部分に取り組むことで「いわゆるジャズ」の演奏の面白さを知り、聴く面白さとの相乗効果でどんどん深みにはまってしまうのだと思います。
さて「いわゆるジャズ」の魅力?を説明したところで、話題を少し変えます。
ここまで言及してきませんでしたが、実は「アレンジジャズ」は「いわゆるジャズ」の上達のついでに、ある程度のレベルに達することが可能です。私はその昔、知人の結婚式の2次会でSMA〇の「らいおん何とか」を弾いたことがありますが、楽譜は買っていません。でも、9thとか裏コードとか、ジャズで弾くようなボイシングを入れて、「ジャズっぽいこと」を結構やりました。
管理人演奏の「いつか王子様が」も、元々楽譜があるわけでも、ジャズピアニストの「完コピ」でもありません。ついでに、今から10年以上前の王子様の録音があったので、こちらも載せておきましょう。所詮弾いているのは私なので、“管理人の演奏音源”に載せているのと基本似ています。
最近の演奏↓
比べて頂けると分かりますが10年ほとんど変えていない部分もある一方、全体的にメリハリがなく、同じような音使いを繰り返しています。要はアレンジと言っても、結局演奏者のレベルによって、表現レベルはまちまちなのです。(昔の方が上手い、好きだ。と思う人がいてもそれも良いと思いますが・・・・)
※さらにこの後にエバンスを聴くと、いかに彼が上手いかよく分かりますよ。
一応補足しますと、本格的なアレンジやDTMとなるとまた別の技能が必要ですし、ピアノの演奏技術だって、(私と違って)クラシックをちゃんと学んだ人が演奏すれば選択肢は大幅に広がります。他にも特有のリズム感を持った楽曲をアレンジしたい場合など、「いわゆるジャズ」だけでカバーできないことがあることは間違いないと私も承知しています。
とは言え、ジャズの理論やコード、音使いというのは、汎用性が高く、現在多くの音楽に影響を与えていることは事実です。これが、「いわゆるジャズ」をそこまで聞かなくても、理論を利用すれば、音使いによって、「アレンジジャズ」や「楽譜ジャズ」が出来上がる理由だと考えることもできます。したがって、取り組みたい音楽や目的によっては「いわゆるジャズ」に真剣に取り組むのはかえって蛇足になることすらあると思います。
例えば、「いわゆるジャズ」派でなくとも上手い人のアレンジは、聞いていて普通に気持ちいいですし、(私などにとやかく言われる筋合いではないくらい、)結局上手い人は上手いです。弾けない4ビートのスイングに下手に手を出してヨレヨレになるようなことはなく、自分の得意な所で表現してくれます。個人的に、これは本当にありがたいです。8分音符やリズムは音楽に乗れるかどうかの大切なポイントですから、気になってしまうともうダメなのです。
繰り返しになりますが、ジャズのリズムは本当に難しいです。あくまで個人的な意見としては、好きでも弾きたいわけでもないのに中途半端に向き合って、結局上達しないくらいならば、最初から割り切ったほうが良いと考えています。
ここまで色々と述べましたが、分類とか定義とかは、価値観の問題でもあります。本格的なピザ職人から言わせれば、マルゲリータと名乗っていながら生バジルを使っていないのは、マルゲリータとしてどうしても認められない。という話と似ている気がします。大抵、この類の話は料理文化に流れ着くことが多いですね。他には寿司とかですか?
だから、正解はないことなのだと思います。ただ「いわゆるジャズ」が淘汰され、絶滅することだけは避けたいものだと思いますが。
さて今回は抽象的な話が多くなってしまい、そろそろ長くなってきましたので、そろそろまとめたいと思います。
ここまでの内容の通り、世の中のジャズは大きく分けて3種類存在すると考えています。「楽譜ジャズ」「アレンジジャズ」「いわゆるジャズ」です。
どのような形であれ、ジャズに興味を持ったならば、自分の興味がどれに近いのかを知っておくと良いと思われます。理由としては、3つのジャズは全く違うものであるにも関わらず、3種境界線がなく一括りに「ジャズ」として情報発信されているからです。
違うアプローチをしてしまうと、自分がやりたい音楽に近づくことができません。
「楽譜ジャズ」は、それだけでは大抵アドリブに繋がりませんが、手軽にジャズで聞ける様な音使いを楽しむことができます。
世間的に認知度が高い「アレンジジャズ」を弾く場合、実はコードトーンを覚えて右手でメロディという単純は発想ではなく、コードの適切なボイシングを習得することが望ましいです。
ジャズマニアたちがジャズと考えがちな「いわゆるジャズ」は、「アレンジジャズ」の要素をカバーする部分もありますが、やりたい音楽によって不足する部分や、蛇足になる部分も出てくるでしょう。
もしあなたがせっかくジャズに興味を持ったならば、楽譜やアレンジがお目当てだったとしても、とりあえず一度は「いわゆるジャズ」がどういうものか聞いてみてもらえれば私としては嬉しく感じます。残念ながら、その「いわゆるジャズ」は、一般的には馴染みが薄い音楽であることは否定できません。
ただ、「アレンジジャズ」や「楽譜ジャズ」を作るときの大元の音楽になっているものですし、マニアがいるということは魅力もあるということです。もしかしたら、聞いてみれば好きになるかもしれませんよ。という「いわゆるジャズ」好きの老婆心でした。
今回の記事があなたの役に立てば幸いです。
・スプレッドボイシングに関する記事はこちら↓
・姉妹記事「初めのうちはジャズの良い演奏を見極めるのが難しいという話です」はこちら
ジャズピアノ研究室 管理人
田中正大
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