ジャズスタンダード「I'll Close My Eyes」型のコード進行が、ジャズの練習に適している理由
- 2024年5月11日
- 読了時間: 9分
更新日:2024年8月25日
以前、柔道から考えるジャズピアノの練習の原理原則という記事で、バップフレーズの原理原則を解説しました。もしまだ読まれていない場合は、是非リンクからご確認下さい。
今回の記事は、上記で解説したバップフレーズの習得のための、より初期のステップについて解説すると共に、スタンダード曲「I’ll Close My Eyes」型の進行がなぜその練習に向いているかという点を深堀して行きたいと思います。
この記事を読むことで、コードトーンを追ったフレージングを習得するための練習方法が分かる様になり、あなたのアドリブ上達の役に立つと思います。
まず、なぜI’ll Close My Eyesの様な進行がジャズのアドリブの練習に向いているかというと、単純にジャズで頻出する「ツーファイブワン」進行が曲中に多く含まれるからです。
この進行を、よく演奏されるF(メジャー、以下略)のみならず、C、B♭などに移調することで、ジャズでよくやるスタンダード曲の多くの進行をカバーできます。
一方、カバーできるのはあくまで、よくやる歌モノが中心ではありますし、パーツとしてのコード進行を習得することと、それぞれの曲固有、曲全体を通したコード進行を習得することは違うという反論もあるでしょう。それはその通りだと思いますが、曲全体を通したコード進行を解釈し、その曲をレパートリーとして習得したいならば、まずはパーツとしてのコード進行の習得が必要なはずです。
以上を踏まえて、I'll Close My Eyesほど、練習曲としてこの一曲を弾き込むことで、ジャズで出てくる基本的なコード進行をカバーできる優秀な曲はなかなかありません。ただし注意事項として以下の弱点はご留意ください。
・Ⅱ度セブンス(Aトレの3、4小節目の様な響き)と、ディミニッシュコードをカバーできていないことです。
しかし、これら二つは最悪、以下の考え方で代替可能です。
・Ⅱ度セブンスはリディアンセブンスがハマるためI'll close my eyesのB部の2小節目(FにおけるE♭7)のフレーズを応用可能。
・ディミニッシュの所はオルタードで弾いても、どうにかなる。
※実際ハンクジョーンズにそういうフレーズがありました。
もっと言うと、この上記のコードであれば、ツーファイブをしっかり理解できていれば、単独で練習、学習することが可能です。
一応、Ⅱ度セブンスに関しては、カバーできる類似の進行を持つ曲として、There will never be another youとConfirmationがあります。前者に関しては、類似も何も、前半同じ進行でキーが違うだけです。で、この曲の13、14小節目にⅡ度セブンス(たいていF7)が登場します。
しかし、一般的に演奏されるキーが♭3つのE♭であるため、これをそのまま練習しても、セッションなどで他の曲に展開できる機会が少ないです。そこを補うためには初心者がまず取り組みやすいFなどに移調する手間も発生します。
それであれば、Ⅱ度セブンスのためにこちらを選択するよりは、I'll Close My EyesをそのままFで練習したほうが取り組みやすく、習得したことを他の曲にも横展開もしやすい。ということです。
もう一つ、後者のConfirmationでは2度セブンス(基本G7)は7小節目に登場します。しかしチェンジが2拍ずつ(ショートツーファイブ)であるため、初心者には紛らわしいでしょう。
また、D♭のツーファイブもあるため、最初のうちはスルーした方が良いといった、別の配慮が必要になります。他には曲のテーマが複雑なため、そもそも初心者が中心のセッションの場合はコールされる機会がほとんどない、と言っても過言でなく、実演の機会が確保できなくなります。
以上のポイントより、I'll Close My Eyesが落としどころとして、非常に秀逸なのです。もう一つだけ一応デメリットを挙げておくと、比較的、音源が少ないということでしょうか。少なくとも、他の二つに比べて、ジャズジャイアントが残している録音は、圧倒的に少ないと思われます。
いずれにせよ、上記のデメリットを補って余りあるのがI'll Close My Eyesなのです。
この曲の秀逸さを説明したところで、ジャズは1拍目と3拍目にコードトーンを追いかける感覚が大切というのを、原理原則の記事で説明しました。
このための簡単なエクササイズがこちらです。コード進行は概ねFのI'll Close My Eyesの進行を使っており、サンプルの音源も聞けるようにしてあります。
※6小節目のG7はDm7のままのこともあります。(ブルーミッチェルはその進行です)
<タイプ1> B部6小節目のE7のソ#がラ♭になっておりました。ご了承願います。

タイプ1は、1、2拍目でコードの3、5、7、9(m7への進行では♭9)のアルペジオを弾いた後、3拍目にルート音に着地する。という感覚を養うものです。
<タイプ2>

タイプ2の方は、3、4拍目でコードの3、5、7、9(m7への進行では♭9)を弾き、次の小節の頭、すなわち1拍目で、新しい小節のコードの5度に着地しています。
但し、注意点としては、m7♭5コードについては、9度がアウトするため、そのコードのアルペジオ(タイプ1)、またはそのコードに向かっているアルペジオ(タイプ2)は若干フレージングを変形しています。
この時のポイントは以下の通りです。
まず、アルペジオによって、コードの構成音(コードトーン)に慣れることができます。
もう一つは、ミ→ソ→ファや、ファ→ラ♭→ソ、の様に、一度上まで行って、戻ってきて狙った音に着地するのがディレイドリゾルブです。このディレイドリゾルブを伴って、1、3拍目でコードトーンに着地する感覚は、こういった練習をしないとなかなか養えません。
しかし繰り返し練習すれば、徐々に慣れてくるものです。必ずしも、このテンポでやる必要はなく、あなたが無理なく、余裕を持ってできるテンポまで、いくらでも(80でも60でも)落として構いません。
※ディレイドリゾルブはこういった順番以外にも色々なパターンがありますが、全て挙げるわけにいかないため、ここではこのパターンのみです。興味がある方は、一番最後のおまけの中でも探してみてはいかがでしょうか?
尚、音源までは用意できておりませんが、単純にCとB♭に移調しただけの譜面は用意したので、必要に応じて併せてご確認頂ければと思います。
※同じくB部6小節目のB7のレ#がミ♭になっておりました。ご了承願います。


※同じくB部6小節目のA7のド#がレ♭になっておりました。ご了承願います。


また、I'll Close My Eyesの進行では難しすぎると感じる場合、
Fブルースの進行も用意しておりますので、まずはそちらから取り掛かってみて下さい。
以下、個人的な見解ですが、ブルースのⅠ度Ⅳ度が「メジャーセブンス」ではなく「セブンス」なのは、初心者の人に大きな混乱を与える原因だと思っています。私も今の所、理論的に、その理由を説明できません。よって、とりあえず、そこは割り切って、「そういうもの」だと取り組むのが良いかもしれません。B♭7からF7への進行は、ディレイドリゾルブではなく、半音でアプローチしています。


いかがでしたか?これは基本的なエクササイズであり、もちろんこれだけで流麗なアドリブができるようになるのは難しいでしょう。
しかし、I'll Close My Eyesの進行を利用して、これらのエクササイズを、余裕を持ってこなせるようになると、多くのスタンダード曲の進行で、かなりコードトーンやコード進行がはっきり分かるようになっているはずです。そうなることで、理論を勉強した場合も、理解度が上がり、それにより、また新しいコード進行を覚えやすくなる。といった良い循環を生み出すことが可能になります。是非、焦らず取り組んでみてください。
あと、おまけとして、全て八分音符で埋め尽くした、「実際にはありえない」フレーズを載せておきました。このように、1、3拍目に着地する感覚を養うと、着地が新たなフレーズのスタートとなり、フレーズを延々と続けることができます。更にこの感覚が身に付くと、同じコードが2小節とか続く場合に、FM7が2小節ではなく、2拍のFM7が4回繰り返されていると考えることもできるようになり、フレージングに迷いがなくなります。(それが4小節になっても同じこと。)
繰り返しになりますが、このおまけのフレーズは句読点や息継ぎのない朗読のようなものであり、実際にはありえません。ただ、1、3拍目に適切なアプローチを続けると、このようにフレーズを続けることができ、かつそのフレーズは単音でも曲のコード感を出すことが可能ということを、理解頂きたかっただけです。



最後にまとめますと、I’ll Close My Eyes型の進行は、ジャズスタンダードの多くの曲の進行をカバーするものです。この進行に絞って練習することで、多くのジャズスタンダードのコード進行のパーツを習得できます。今回はアルペジオを用いて、1、3拍目に着地する感覚を養うエクササイズを作成しましたので、興味がある方は、是非やってみて下さい。
※補足記事「ジャズ理論 Ⅱ7とディミニッシュについて」のリンクはコチラ
※ブログ「ウィントン・ケリーのI'll Close My Eyesのアドリブについて解説します」はコチラ
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<著作権情報>
伴奏音源のドラム、ベースはi Real Pro©2009-2004 Technimo LLC.(https://www.irealpro.com/)に帰属します。
今回は、基本的なエクササイズの紹介でしたが、私が作成したアドリブを取るための練習教材は、I'll Close My Eyesのコード進行のデメリットを補うため、There will never be another youとConfirmationのコードも参考にしたオリジナルのコード進行を使っています。
更に、その進行におけるジャズジャイアントのフレーズを掲載しています。これにより、より実践的なアドリブフレーズやコード感覚を習得できるように設計しております。
併せて、そのために理解するべき理論なども解説しており、アドリブの練習に悩む人に向けた解決策と言えます。もし更に内容を詳しく確認したい場合などは、お問い合わせページからの問い合わせや以下のリンクからショップページの詳細をご確認下さい。
以下の教材は、オリジナルのコード進行を用いて、ジャズジャイアントのフレーズを効果的に習得し、
アドリブを取れるようになるためのものです。
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